ロシアのアンチウイルスベンダー、Kaspersky Labが12月4日にモスクワで「New Horizon」と題したプレス向けイベントを開催した。同社の経営陣が登壇し、世界のITセキュリティ動向、Kasperskyの経営状況などについて講演した。
Kaspersky最高経営責任者、Eugene V. Kaspersky氏に続いて登場したCOOのEugene Buyakin氏は同社の経営状況、今後の成長戦略などについて語った。
Buyakin氏はまずKasperskyの現状について解説した。同社は現在、モスクワに本社を置き、28カ国に製品を展開している。世界で3億人のユーザーに製品、サービスを利用されており、1日に5万人が新たにユーザーになっているという。「これは世界のインターネットユーザーの20%に相当する数字だ」とBuyakin氏は胸を張る。
Kasperskyの2009年の売上は、厳しい経済環境にもかかわらず前年比31%増の4億3000万ドルを見込んでいる。2010年にはさらに40%増の6億ドルを目指す。売上構成比はBtoCが65%、BtoBが27%、技術提携が8%。地域別ではヨーロッパが45%、米国が26%、EEMEAが21%、APACが8%を占める。
Buyakin氏は1年前の2008年12月、「セキュリティソフト業界は大手4社の時代になった」と語っていた。Kasperskyの調査によれば、同社はその年、セキュリティソフト分野でシマンテック(37%)、マカフィー(18%)、トレンドマイクロ(7.1%)に次ぐ、4.2%のシェアを獲得し、市場で存在感を見せつけた。
それが2009年は6%までシェアを広げ、逆に6.9%にシェアを落としたトレンドマイクロに肉薄した。そして2010年には7%のシェアを得て、念願の世界第3位の座を狙う。
この勢いは何に起因しているのか。Buyakin氏は次のように語った。「我々はR&Dに積極的に投資している。1年間でその規模を1.5倍に増やした。この業界で成功するためにはR&D部門の拡大が必須になる」とBuyakin氏は語る。
事実、KasperskyのR&D部門は2008年1月には400人強だったが、12月の段階で600人を超える規模になった。
Buyakin氏は現在のセキュリティ業界のトレンドを5点挙げた。
このような状況下で競争力となるのが技術革新であるとBuyakin氏は語る。「Kasperskyは独自のR&Dプロセスでベストな位置につけている。優秀な技術者をプールし、オールスターチームを結成した」。
1997年に設立したKasperskyは10人のオーナーによって運営されている。このことがR&Dに良い影響を与えているという。
「我々はプライベートカンパニーであるため、株主の顔色を伺うことなく、心ゆくまでR&Dと新技術に投資できる。財務的にも成功し、年次50%以上の成長を謳歌している」
次に狙うのは「情報セキュリティ」だ。IDCの調査によれば、情報セキュリティ市場は28億ドル規模のポテンシャルがあるという。この市場はネットワークセキュリティが30%、エンドポイントセキュリティが25%、アクセス管理が14%、メッセージングセキュリティと脆弱性管理がそれぞれ11%、ウェブセキュリティが6%を構成する。
Kasperskyはアンチウイルスに続いてエンドポイントセキュリティにフォーカスし、さらにセキュアコンテンツおよび脅威マネジメントへと手を広げる。地域としては日本とアジア・パシフィックでの拡大を目指す。
この成長戦略を実現するためにBuyakin氏が重視するのは、技術開発、パートナー、ブランド、ローカライズの4点。同氏がこれらのポイントを挙げるのは従前通りだが、今回はことさら技術開発の充実を強調し、「我々はR&Dへのさらなる投資を進め、オールスターチームを最大限活用していく」と締めくくった。
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