ロシアのアンチウィルスベンダー、Kaspersky Labが12月4日にモスクワで「New Horizon」と題したプレス向けイベントを開催した。同社の経営陣が登壇し、世界のITセキュリティ動向、Kasperskyの経営状況などについて講演した。
トップバッターを務めたKaspersky最高経営責任者、Eugene V. Kaspersky氏の講演タイトルは「New Horizons for a Pollution-Free Digital Future」というもの。サイバー犯罪の危険にさらされている現在の環境を改善するには、どのような方策を実行すべきかを指し示した。
冒頭、Kaspersky氏は、個人、企業、政府のあらゆるインターネットユーザーがサイバー犯罪のターゲットになっていることを強調した。
「世界経済そのものがリスクにさらされていると考えるべきだ。ネットが登場し、短期間で世の中が変わった。紙がデジタルに置き換えられ、より多くのデバイスがネットに接続し、負うべきリスクも増大した。すべてのビジネス活動がネットに依存している」
一方で政府の認識はまだまだ甘いという。国境というものが存在していると考えるのがそもそも間違っているとKasperskyは言う。
「我々は国際化について真剣に考えるべきだ。サイバー犯罪者はフーリガンのようなただの悪党ではない、経済的なモチベーションに基づいたプロフェッショナル集団だ」
このような状況でKaspersky氏が嘆くのは、個人、企業、政府の誰もがITセキュリティの優先度を低く見積もっていることだ。
「個人ユーザーはセキュリティに懐疑的で、サイバー犯罪に対して無防備だ。中小企業は最初から問題にもしていないし、大企業はコストとして考えていない。政府は経済危機をはじめとして、ほかに解決すべき問題を抱えすぎている」
では、「セキュアなOS」が存在したらどうなるか、とKasperskyは提案した。いま多くの人に利用されているOSは柔軟だが、安全とは言えない。そこで真にセキュアなOSというものの可能性を考えてみようと呼びかけた。
「セキュアOSというからには、すべてのアプリケーションが信頼できる状態になければいけない。信頼できる状態とは何か、それは暗号化証明書によって保証されているということだ。もちろん、この保証書の申請を受け付け、発行する機関が必要になる」
こんな取り組みは現実的ではないとKaspersky氏は語る。「結果的に、開発されるアプリケーションやサービスの数が少なくなってしまうだろう。だから顧客は安全ではないが、柔軟なOSを買い続けることになる。たとえばMicrosoftのようなね」
「携帯電話、自動車、カメラ、音楽プレーヤー。これらは皆、コンピューターだ。だいたいにおいてWindowsようなOSが走っている。ある日突然、自動車のスピードメーターの上にWindowsの警告画面が出てきたらどうすればいいのだろう。これがサイバーテロリストの脅威の本質だ」
Kaspersky氏は汚染された世界をきれいにするためには3つの方法が有効だと主張する。1つ目はKasperskyのようなアンチウィルスベンダーが、あらゆるネット接続ポイントとデバイスに対してセキュリティ製品およびサービスを供給し続けること。2つ目は子供、学生、ITプロフェッショナル、企業、政府に教育を施すこと。
そして最後に、国境をまたいでサイバー犯罪を取り締まるための国際的な組織も求められているとした。「サイバーポリスを設立するために、世界中の国や法機関が協力し合うべきだ」とKaspersky氏は呼びかけた。
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