退路を断ったアメーバ黒字化の感慨とその先--サイバーエージェント藤田社長の次の設計図

鳴海淳義(編集部)2009年11月18日 07時00分

 サイバーエージェントのメディア事業「アメーバ」がスタートから5年、長い赤字時期を乗り越え、ようやく2009年9月期第4四半期で2億円の黒字化を達成した。今期は13億5000万円の営業利益を見込み、先行投資してきた約60億円を2年で回収する計画だ。

 アメーバは2004年9月にサービスを開始した。伸び悩んだ時期、社長の藤田晋氏が自らアメーバ総合プロデューサーに乗り出すとともに、2009年までに黒字化できなければ社長を辞めると宣言し、退路を断った。

 安定した収益を生み出す広告代理事業、FX事業、多くのグループ会社を抱えながら、なぜ一途にメディア事業での成功を目指したのか。黒字化に至るターニングポイント、そしてまもなくリリースする新サービス「Amebaなう」について、サイバーエージェント代表取締役社長であり、アメーバ総合プロデューサーである藤田氏に聞いた。

--ついにアメーバが黒字転換しました。これまでの5年間を振り返って、率直な感想は。

サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏

 いろいろ事業戦略上、オペレーション上のミスもあり、時間がかかりすぎたと思っています。その間にブログが世界的にもそれほど儲かるものではないという認識が出てきましたし、国内の各社も進化を止めてしまった。我々自身も収益化できるとは見られていなくて、赤字を流していたことが報道などで伝わりました。

 ただ逆にそれが参入障壁になったというか、「あんなに赤字が出る事業をまさか社内でやろうなんて」となった。それでブログの分野で差をつけることができたと思います。長い赤字によって周りを萎えさせたところが良かったですね(笑)。

--立ち上げ時期はどのようなことに苦労していましたか。

 1つには、アメーバはメール事業からブログ事業に転換を図っていたので、メール絡みの事業を付けていたことがあります。そこからスタートしたので余計なコストが最初に乗っかっていました。

 あと社内の技術陣の体制が昔は非常に弱かったです。大量のウェブへのアクセスに耐え得るような体制が整っておらず、最初のうちはしょっちゅうサーバダウンを起こしていました。

 2006年に技術者を大量採用し、いまもその時期に採用した人たちが主に活躍しています。最初の組織変化、技術に対する見通しの甘さが大きかったですね。

--黒字化へのターニングポイントはどこにありましたか。

 技術者を採用すると同時に、もともとアメーバ事業を任せていた責任者を全員入れ替えて、僕がトップダウンになるような体制を敷きました。「仮にこれで2009年までに形にならなければ僕も社長を退くから、全員アメーバからは異動してくれ」と言って、覚悟を決めました。

アメーバの月間PVの推移アメーバの月間PVの推移(クリックすると拡大します)

 そこがやはりターニングポイントでしたね。実際ページビュー(PV)も伸び始めました。2007年7月、8月あたりですが、当時は30億PVを目指すと言っていた時期でした。僕はそれまでマークシティのオフィスにいましたが、こっち(サイバーエージェントビル)に移ってきました。社長を辞めるというのは社内で言っていましたが、新聞に載ってしまったので公約っぽくなってしまいましたね(笑)。

みんな理由を見つけてブログ事業をやめていった

--そこまでメディア事業に入れ込んだ理由は何ですか。

 ネットビジネスと呼ばれるものがITバブルのころに注目されたのは、収穫逓増モデルで、非常に利益率が高く、コストを低く運営できるというところがあったからです。

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