映像コンテンツの二次利用、諸外国ではどう扱う?--文化庁主催のシンポジウムで報告

 デジタル化の進展により、従来の制度体系では対応が困難な状況に直面しているコンテンツの二次利用問題。政府は検討会を設置し、公正な二次利用の促進のための法体系や制度の見直しを進めているが、権利者をはじめ、コンテンツの録画再生機器メーカー、配信事業者、消費者といった複数の利害関係者が絡む問題に、議論は平行線をたどった状態にあるというのが実状だ。

文化庁主催のシンポジウム 文化庁主催のシンポジウム

 こうした国内事情に対して、比較的スムーズに対応が進んでいると言われる諸外国ではどうした対応が取られているのか。文化庁主催で10月30日に開かれた「第6回コンテンツ流通促進シンポジウム〜転機を迎えた我が国の映像コンテンツ契約」では、「映像コンテンツ契約の現状と課題」と題したパネルディスカッションが行われ、ほかの先進国における映像コンテンツに関する契約の実態が報告された。

 ハリウッドを擁するコンテンツ発信大国である米国における映像コンテンツ契約は、ギルド(組合)間の基本協定による権利処理が行われれているのが特色のようだ。TMI総合法律事務所の弁護士である升本善郎氏の話では、米国における映像コンテンツ制作における唯一の著作者・著作権者は、プロデューサーや製作プロダクションとされており、監督をはじめ、脚本家や俳優といったその他の関係者は、職務著作という位置づけで制作に関わり、著作者人格権、実演家人格権は認められていない。

 また、最低報酬や二次使用料、クレジット、労働条件、年金・保険といった契約条件は、Alliance of Motion Picture and Television Producers(AMPTP)と呼ばれるプロデューサー側の組合と、Writers Guild of America(WGA)、Directors Guild of America(DGA)、Screen Actors Guild(SAG)といった実演家側の組合側の間に結ばれた基本協定に基づき、いわば労使間交渉というかたちで4年に1度行われているとのことだ。ただし、組合との基本協定が保証する最低二次使用料を超える追加報酬の支払いや、ネットなど新しいメディアでの映像コンテンツの二次使用料の支払い、映像コンテンツ中の第三者の音楽・映像を使用する場合の取り扱いについては、留意すべき事項として検討課題となっている。

 一方、ヨーロッパの例では、イギリス、フランスでは、テレビ番組の放送終了後一定期間のネットでのVOD配信は、一次利用に含まれるものとしてすでに扱われている。社団法人著作権情報センター 付属著作権研究所 専任研究員の財田寛子氏によると、フランスの著作権法では、ネット配信はテレビ放送に含まれるものとして扱われているのだという。また2007年に放送番組のVOD配信に関する団体協定が設立して以降、新しい作品に関しては、できる限り製作段階で権利処理をすることで、実演家への対応が容易になった。過去の作品に関しても、実演家側がさかのぼって請求することを前提にした使用料の交渉が集中管理団体と放送局の間で進められている。

 同様にイギリスの場合も、生放送を含むネット配信は放送の概念に含まれる。ただし、権利者関係については、米国同様に職務著作により権利者は製作者に限られ、監督は著作者人格権が契約上放棄されている。また、過去の作品のネット配信については許諾が必要となり、原著作者との権利処理が困難な状況にある。新しい作品のネット配信についても、使用料の交渉が難航する場合が多いのが現状だという。

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