“成長の踊り場”からの飛躍、必要なのは「ともに企業価値を高めるパートナー」 - (page 2)

今野:まずは資金と人材を入れて、ビジネスを1人のキーマンがワンマンで動かすやり方ではなく、経営を考えたキャッシュフローを考えて回していく仕組みづくりをしました。それこそ会議で使う資料も一から作り直して、事業別やプロジェクト別の収益性、案件進ちょく、稟議規定などかなり細かいところまでです。

中村:組織として利益を上げるための役割分担を徐々に整理して明確にしていきました。しかし、悪循環が来るところまできて、2007年秋ぐらいにいったん、案件受注を全部ストップしました。今野さんに「こんなことやってちゃだめでしょ」と言われて、本当に収益率が高い、その当時の体制でも絶対つくり切れる案件だけに絞って、体制を立て直すことに集中しました。

今野:黒字でも赤字でも続く会社は続くのですが、もっとも続かない理由はキャッシュがなくなってファイナンスが続かなくなることです。実は、開発期間中のベンチャーはキャッシュフローがもっとも大事な指標ですけど、キャッシュを消化している段階では、次のファイナンスを意識しながら事業判断をすることも肝要なのです。

 具体的には、キャパシティー以上に売上を追求するなど、闇雲に頑張ってキャッシュフローを痛めるよりも、メッセージ性の強いプロジェクトや収益性・継続性の高いプロジェクトをしっかりこなしていけるよう体制を整理しました。実はそのときのプロジェクトが今の事業転換の軸にもなっています。研究開発費を投じるのではなく、案件ベースで市場のニーズを探ってうまく展開できたと思います。

--中村さんがGCPとの付き合いを通して感じた、ベンチャー企業から見たVCの理想的なあり方というのはどういうものでしょうか?

中村:一般的に、VCというのは、投資に対するリターンをとにかく早く出すことを強く求められるものだと思うんです。でもベンチャー企業からしたら、それだけを追いかけると事業を壊しかねない。短期、中期、長期での視点をそれぞれ考慮した上で、トータルでの企業価値を上げることを親身になって考えてくれる存在になってもらうことはベンチャー企業にとっては本当にありがたいです。VCが投資先の人間と話すときに、自分たちと投資先の企業とをあわせて「我々」と言ってくれる、一緒になって考えてくれるというのはベンチャー企業にとっては大変ありがたいですね。

--逆に、今野さんから見たベンチャー投資のあり方とはどういったものですか?

今野:VCである以上、我々は投資家から預かった資金を最大化してそれをお返しするというのが第一義的なミッションです。もちろん個人として新しい産業にチャレンジしている人・会社を支援したいと常に思っていますが、資本主義の生態系の中での職業人としては、ベンチャーに投資するのは、リターン最大化のための手段とも言えるわけです。

 ただ、その手段を達成するために投資先の人たちに我々ファンドのロジックを過度に、またはそれを正面からぶつけてもいいことはまったくと言って良いほど良いことはないと感じています。だからと言って、それを外したから我々の経営陣と対立するというわけでもないんです。本質はシンプルで、ファンドが入っていようが、成長のためにやるべきことはあまり変わらないと思います。

今野穣

グロービス・キャピタル・パートナーズ

プリンシパル

2006年7月Globis Capital Partners入社。現在同社にて、IT/Mobileセクターを中心に投資をリード。 担当先企業として、インタラクティブブレインズ、ライフネット生命保険、メタキャスト、ビープラッツなどがある。前職は、Arthur Andersen Business Consultingにて、グローバルサプライチェーン戦略立案、Post Merger Integration、営業オペレーション改革、中期経営計画策定などのプロジェクトマネジャーを経験。 東京大学法学部卒。

中村達郎

インタラクティブブレインズ

取締役副社長

1991年、日本テレコムに入社、法人営業・携帯電話代理店事業の立上げ に参画。関連の携帯電話会社に出向し、マーケティング・ブランド戦略に従事後、 退社。通信系ベンチャー企業に転じてマーケティングマネジャーを担当後、2003年 にKDDI。au事業のマーケティング戦略グループリーダーとして、複数のヒットサービスの市場投入戦略を牽引。2007年4月、インタラクティブブレインズ入社。2007年11月より現任。立教大学社会学部卒。グロービス・オリジナルMBA(GDBA)修了。

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