ヤフーは10月28日、インターネット上での選挙活動の解禁を求める署名サイトを開設した。
現在、インターネットでの選挙活動は公職選挙法で厳しく制限されている。同日、都内で開催された記者発表の席で説明を行った、同社CCO兼法務本部長の別所直哉氏は「インターネットは有権者が政治家を選ぶ上で有益な情報が多数ある。また、ブログやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などを通して意見表明や意見交換により、政策に関する意見形成を行い、候補者を選択できることが必要。現在の法律では、選挙期間中にそういった情報を候補者の側が発信することも、有権者の側がアクセスすることもできず、問題がある」とし、インターネットでの選挙活動の解禁を求める賛同者の署名活動に至った理由を明らかにした。
インターネットは「文書図画」や「あいさつ状」に該当するというのが現行の公職選挙法での解釈。同法が定める「『文書図画』の禁止」(第142条)、「『あいさつ状』の禁止」(第147条)により、選挙期間中のインターネットでの選挙活動はすべて禁止されることになり、候補者がブログに投稿できないだけでなく、候補者の応援メッセージをブログに書き込んだり、候補者の写真や動画をサイトに掲載するといった有権者側の活動も規制されている。
一方、これに対して諸外国でのネット選挙の実態について別所氏は「ネット選挙の諸外国の例で言うと、米国・イギリス・ドイツでは選挙活動のネット規制はほとんどない。日本同様に、選挙運動の手法に規制を設けているフランスや韓国でも、インターネットの利用を制約付きながら認めている」と説明。2010年1月召集の次期通常国会直前までサイト上で署名活動を続け、集まった署名をもとに国会議員への働きかけ、次期通常国会での審議を求めていく意向を明らかにした。
同社によるネット上での署名活動は、2008年12月から楽天と合同で実施した、医薬品のネット販売規制への反対を求める署名活動に続いて今回で2回目。「今回も賛同してくれる会社にいくつか声をかけていて、前向きに検討していただいている。ぜひほかの会社と一緒に行っていきたい」と同氏。さらに、「ネットをなりわいとする一企業として、ネットを選挙にも適切に使えるようにしていくのが社会的責任のひとつと考えている。ビジネスサービスへの影響はまったく考えていない」と今回の取り組みについての意図を語った。
また、ネット選挙の解禁が過去に2回国会で否決されている事実について「今まで我々も何度かネット解禁の検討会に呼ばれたが、議員の間に十分理解が得られていなかったと思う。議員の間で挙がっていた懸念のほとんどは、誹謗・中傷への対応についてだったが、リアルの世界でも問題は起きていて、ネットだからどのような影響力があり、何が起こりうるかというのが実感として理解されていないように感じた」と説明。一方で、「夏の総選挙でネット利用が随分拡大してきた。当時と現在では状況は大分変わってきている。だからと言って何もしなければ、解禁にはならない」と、署名活動開始に至った経緯について言及した。
そのほか、ネット選挙で懸念されるデジタルデバイドの問題や選挙費用については「現在の日本のネット普及の状況から言うと、支持者も含めた候補者全員がネットを利用できず困るということは想定できない。費用に関しても、全体の選挙費用のうち、ネットの部分に一定枠を設けることで一定のコントロールは可能。選挙活動というのはネット活動だけで完結するわけではなく、見栄えのよいホームページを作れば効果があるというのは違うと思う」と所感を述べた。
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