AT&Tは、Googleが「Google Voice」サービスで特定の通話を遮断しているので、ネット中立性の点でGoogleは偽善者だと非難している。
AT&Tは米国時間9月25日、米連邦通信委員会(FCC)に書簡を送付し、FCCのネット中立性原則を長年支持してきたはずのGoogleが、自ら中立性を侵害していると主張した。一方のGoogleはブログ投稿で自社の立場を弁護した。この投稿は、ワシントンに駐在するGoogleの通信担当法律顧問で主要ロビイストのRichard Whitt氏によって書かれたもので、基本的にはAT&Tが次元の異なる対象を比較していると述べている。
AT&TはFCCへの書簡の中で、GoogleがGoogle Voiceサービスを使用した特定地域への通話発信を遮断していることから、同社がFCCによる「Internet Policy Statement」(インターネット政策宣言)の第4原則を侵害していると述べた。同原則では、ネットワーク、アプリケーション、サービス、およびコンテンツのプロバイダー間における公正な競争を求めている。
AT&Tの連邦規制担当シニアバイスプレジデント、Robert Quinn氏は声明の中で次のように述べた。「Googleは、競合他社に当てはまる通話遮断の禁止を大っぴらに振りかざすことにより、FCCのInternet Policy Statementに含まれる第4原則について、文面上は問題ないにせよ、その精神に相反する行動を取っている。皮肉にもGoogleは、自ら熱烈に唱えてきた通称『差別しないことを定めた第5原則』も無視している」
GoogleのWhitt氏は、9月25日午後のブログ記事の中で説明を添えてAT&Tに反撃した。同氏は、Googleが一部の地方への通話発信を遮断していることを認めた。同氏によれば、Googleがこうした措置を取っているのは、地方における特定の通信事業者がAT&Tなどの長距離電話会社に対し課金しているためであり、特にこうしたネットワークへの通話の接続が高額のレートになるからだという。
地方の電話会社は規模が小さいため、大規模な地域電話会社が課金できる料金より約100倍高い接続料を課金することが許可されている。だが、「トラフィックポンプ」として知られる慣行において、こうした地方の通信事業者の一部は、アダルトチャットサービスや電話会議センター、パーティーラインなど、自らのネットワークに多くの着信を呼び込む各種サービスと売り上げを共有している。地方の通信事業者は高額料金を課金し、その後これらのパートナー企業と売り上げを分け合う。
2008年には、AT&Tをはじめとする長距離電話会社各社が、こうした慣行についてFCCに苦情を申し立てた。AT&T、Verizon Communications、Qwest Communicationsの顧客の大半は無制限の地域内通話および長距離通話に対して定額料金を支払っているため、これらの通信事業者は、しばしば地方における通話の接続に関連する追加費用を押し付けられている。AT&Tによれば、2007年にはこの費用が2億5000万ドルにも膨れ上がったという。
FCCは地方の電話会社の通話レートを一時的に停止し、トラフィックポンプを永久に禁止する規則を提案した。だが、この提案については今も論議が継続している。
GoogleのWhitt氏は、Google Voiceがユーザーに1つの電話番号を保持することを許可して、インターネット上で通話をリダイレクトすることから、こうした高額の通話レートが適用される懸念があると説明した。ただし同氏は、既存の電話会社に当てはまる規則はGoogleには当てはまらない、と述べた。
AT&Tなどの旧来の電話会社は、通信規制法「Common Carrier Law」(コモンキャリア法)に従う義務があるため、あらゆる番号に対する通話の遮断が禁止されている。同法では電話会社などのインフラ提供業者に対し、「公共の」インフラへのネットワークアクセスを望むすべての人にそれを許可するよう求めている。コモンキャリアの概念では、電話サービスや交通サービスなど公共の通信や移動の権利を利用する基幹サービスに、公衆が確実にアクセスできるようにすることが想定されている。
Googleは、これらの規制がGoogle Voiceへは適用されないとして、その理由をいくつか挙げている。そのひとつとして、Google Voiceは他の企業によって構築されたインフラを利用するソフトウェアアプリケーションということがある。Google Voiceは無料のサービスである。またGoogle Voiceは従来の電話サービスに取って代わることを意図していない。実際、Google Voiceは、ユーザーが固定電話もしくは携帯電話を利用していることが必要である。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ
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