サンフランシスコ発--Appleが米国時間9月9日に開催した音楽関連イベントでは、それほど息をのむような新発表は行われなかったものの、同社が音楽の発見と購入というエクスペリエンスの向上に多大のリソースを注ぎ込んでいることは明白になった。
Appleのプレスイベントにて、同社の最高経営責任者(CEO)であるSteve Jobs氏は、基本的には控え目な「iTunes」のデザイン刷新を披露してみせた。新たに発表された機能としては、「Genius」ソフトウェアの改良、音楽を共有する新機能、デジタルアルバムカバーへの対応などが挙げられる。
この全機能は速やかに提供が開始されている。
Appleの発表には、かつて音楽販売を飛躍的に向上させた刺激的な新デバイスやサービスは含まれていなかった。同社は現在、音楽を購入するユーザーが、音楽、動画、iPhone向けアプリケーションを、よりスムーズに見つけて購入できるようにサポートすることで、売り上げを伸ばしていくことに注力しているようだ。敢えて評するならば、残念ながら、今回のAppleの音楽関連の発表の大半は、平凡な小売業界側のビジネスに焦点を合わせたものである。
こうしたタスクは、少なくともデジタル音楽の進化という観点で考慮するなら、あまり重要なものではないが、依然として多くのユーザーにとっては、好みの音楽を見つけるために、オンラインストアで提供されている膨大な数の楽曲を探し回るのは容易でない。
GartnerのアナリストであるMike McGuire氏は、顧客の望んでいるものを見つけられるように助けることは「小売業界にとって最も古くからの根強い問題となってきた。参入への障壁は非常に低いものの、すぐに人々は目移りしてしまう傾向が強い。デジタル音楽が成熟期を迎えようとしている現在、新たに人々をサイトに引き寄せることよりも、以前からの顧客が引き続き一層製品を利用していけるようにすることに重きを置かねばならない」と述べた。
今回のAppleのイベントに、過去のドラマチックなリリースが欠けていたように思える理由の1つには、ほとんどの発表が数週間前にリークしてしまった点が挙げられるだろう。すでに米CNET Newsは2日、Appleが、あらかじめ作成された着信音の販売を開始すると報じていた。Jobs氏は9日に聴衆に向かって、着信音が1.29ドルで発売され、通常の楽曲と同じようにiTunesに表示されて販売されることを明らかにした。
また、Appleは、当初は「Cocktail」という開発コード名が付され、新たに「iTunes LP」と呼ばれるようになった次世代のアルバムカバーを公開した。Jobs氏は来場者に対して、CDの販売により、かつてはアルバムと一緒に提供されたアルバムアートやライナーノート、その他の素材のセットが終わりを迎えてしまったと語りかけた。さらに、デジタル音楽の登場で、従来のアルバムカバーが消え失せることにもなってしまった点を、Jobs氏は認めている。
しかしながら、Jobs氏は、いまやアーティストが、動画、アート、他のデジタルコンテンツを活用して、iTunes上で販売するアルバムのパッケージに大きな手腕を振るえるようになったと述べている。
また、おそらく「iTunes 9」で最も重要な新機能は、Appleによる音楽の共有への最新の小さな一歩だろう。Appleが「Home Sharing」と呼ぶ新機能により、iTunesユーザーは、自宅で最大5台の認証されたコンピュータにて、ライブラリの各楽曲や楽曲グループをドラッグして共有可能となる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ
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