ベンチャー企業だからこそ作れる家電があるという。CNET Japan主催のイベント「CNET Japan Innovation Conference 2009」で、ネット家電の開発を進めているCerevo 代表取締役社長の岩佐琢磨氏が講演した。
Cerevoは年内にネット接続型のデジタルカメラ「CerevoCam」を発売する。無線LANや3Gに接続してワイヤレスで写真を専用のウェブストレージ「CerevoLife」に自動アップロードするのが特徴だ。保存された写真は携帯電話やiPhoneからアクセスでき、そのままTwitterやFlickrなどの外部サービスに投稿できる。
CerevoCamおよびCerevoLifeは、ブログやソーシャルネットワーキングサービスなどに代表されるソーシャルメディアを利用する層をターゲットとしている。既存のデジカメにネット機能を付随させたのではなく、ネット機能ありきで商品企画したため、ソーシャルメディアとの相性が良く、対応サイトもすぐに増やせるという。これは「Cerevoだからできること」だと岩佐氏は話す。
「家電ユーザーの中に、わずかながらソーシャルメディアユーザーがいる。大手家電メーカーではそういったニッチなニーズは汲み取れないため、ソーシャルメディアユーザーは待ちぼうけしてしまう。Cereveはその人たちのために商品を出せる数少ないプレイヤーだ」(岩佐氏)
またウェブ側とハード側を一緒に企画、開発したことで、より良い使い勝手を実現できたという。CerevoLifeには、デジカメのバッテリ切れを防ぐ機能「バッテリーメーター」がついている。CerevoLifeにアクセスするたびに、CerevoCamのバッテリーがどれくらい残っているかを表示してくれる。「バッテリー残量がなくなると、CerevoCamは最後の力を振り絞って、CerevoLifeに『充電してくれ』と表示するようになっている」(岩佐氏)とのことだ。
Cerevoは商品開発の段階からブログやTwitterなどで積極的に情報を発信している。発売後もユーザーの意見を取り入れてアップデートを繰り返していく予定だという。
すでにファームウェアアップデートで動画撮影に対応することが発表されている。さらに、CerevoCamのAPIを公開し、外部の開発者がCerevoCam上で動作するアプリケーションを追加できるようにする計画もある。ベンチャーならではの機動力だ。
プレゼンテーションの後、イベント会場から岩佐氏にいくつか質問が投げかけられた。
まずは今後のアップデートについて。位置情報やジオタグをつける機能に対応する予定はあるかという問いに対し、岩佐氏は「いまは対応していないが、イー・モバイルのモデムを接続できるので、ほかのデバイスもつなげられる。後日アップデートするなかで、GPS関係の機能も入れたいと思っている」と回答した。
発売後にアップデートを繰り返すと新しく製品を買い換えてもらえないので、メーカーは売上げを伸ばせないのではないか、と心配する声もあったが、岩佐氏の答えは興味深かった。
「モデルチェンジを繰り返していく現在のモデルをメーカー側が望んでいるかというと微妙だと思う。Appleは年1回しかモデルチェンジしないが、これを国内メーカーはどう見ているかは気になるところ。モデルチェンジせずにアップデートして息の長い商品にすると、メーカーには量産効果が生まれるし、ユーザーは自分の持ち物が陳腐化しない。双方にとってもいいことだと思う」(岩佐氏)
さらに会場からは「勝手にシャッターをきって、写真をアップロードしてくれるデジカメはどうか」とアイデアが寄せられた。これに岩佐は「おもしろい」とコメント。「揺れたりするから実用面は難しいけれど、こういう要望もあれば対応を考えたい」と柔軟な姿勢を見せた。
CerevoのTwitterアカウント宛てに意見を投稿すると、もしかしたら自分好みのデジカメが生まれるかもしれない。CerevoCamは白と黒の2色展開で、2009年中に2万円前後で発売する。
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