アジャイルメディア・ネットワークは8月21日、将来性のあるウェブサービスや端末をプレゼンテーションするイベント「WISH2009」を開催した。
このイベントは、ウェブ関連サービスや端末を開発している企業や個人がメディアやブロガーに向けてサービスや端末をアピールする機会を提供することを目的としたもの。14組の登壇者が各6分の持ち時間でプレゼンを披露した。
最初のプレゼンターはオンラインクローゼットサービス「ドレスファイル」を運営するドレスファイル代表取締役の西宏司氏。ドレスファイルは衣服を倉庫に預け、それらのリストをウェブから管理できるようにしたサービスで、2007年にオープンした。
ユーザーから預かった衣服はドレスファイルがクリーニング、写真撮影、データベース登録したうえで倉庫に保管する。保管された衣服はウェブから管理でき、リクエストに応じて配達される。西氏はこれを「所有のクラウド化」と呼ぶ。
今後に向けたアイデアもいくつか披露された。ドレスファイルに預けた服でお気に入りのコーディネートを管理する機能、クローゼットをオープンにし、ほかのユーザーとの間で服を見せ合う機能、不要な服を売買できるフリーマーケット機能、自分の持っている服から新しい服をおすすめしてくれる究極のレコメンドシステムなどだ。
黒板風のインターフェースでお絵かきできるサービス「こくばん.in」を運営するこくばんin代表の宗原吉則氏は、低年齢のユーザーにネットのマナーを啓蒙する取り組みについてプレゼンした。
こくばん.inは2007年4月にサービスを開始した。現在、会員数は約3万人で、アクティブユーザーのうち半数が小中学生だという。低年齢層ユーザーにマナーを啓蒙するために、手書きの注意を掲載したり、マナーに関するクイズに全問正解しなければ友達機能を利用できるようにした。
今後は入力デバイスの拡充を計画している。iPhone、chumby、ニンテンドーDSi向けソフトを開発中だという。会場ではニンテンドーDSi向けソフトのデモが公開された。すでに8割〜9割の完成度とのことだ。
サンゼロミニッツ代表取締役社長の谷郷元昭氏は、ブログ集約型のタウン情報サービス「30min.」についてプレゼンした。30min.はiPhoneアプリがヒットしたことでも知られている。
30min.のビジョンは、生活者とお店をつなぐ架け橋になることだ。今後の展開としては、タウンニュースを配信することで、ブロガーが新規開店のお店やイベント情報を共有し、それをネタにまた新たなブログ記事を書けるようにしていく。
また当日のランチメニュー、いまの行列状況などがわかるような、よりリアルタイム性のある情報を配信する仕組みも追加するという。
さらに30min.をmixiアプリやTwitterと連携させ、ユーザーが一緒に外出する仲間を探せるようにする。すでにmixiアプリを利用して「いまこのお店にいます」「この店に行きたい(行った)」というつぶやきを友人と共有する「30min.おでかけエコー」を公開した。Twitterとの連携機能も開発していく。
ランゲート代表の喜洋洋氏は相互添削型の語学学習サービス「Lang-8」を紹介した。Lang-8は外国人がお互いに母国語を教えあうサービスで、勉強したい外国語で日記を書くと、その言語のネイティブが添削してくれる。代わりに自分の母国語を勉強している人の日記を添削してあげる。ユーザ同士が助け合う仕組みなっている。
2007年8月のサービス開始当初は13カ国からアクセスがあったが、現在は165カ国からユーザーが集まっているという。
日本人ユーザーの割合は2割未満にすぎない。サイトのインターフェースは15言語ほど用意されている。ログインすると、自分の添削を必要としている外国人の日記がずらりと並ぶ。
自分が添削してもらった文章はタグをつけて保存できる。月額525円のプレミアム機能を利用すると、自分の日記と日記につけられた添削をPDFに変換してダウンロードしたり、ノートブックの保存数を無限にしたりできる。目標は世界で1億ユーザーだという。
ネット接続型家電をてがけるCerevo代表取締役の岩佐琢磨氏は、完成間近のデジタルカメラ「CerevoCam」と写真管理サイト「CerevoLife」を紹介した。デジカメとウェブが密に連携し、デジカメを鞄に入れっぱなしにしていても、写真が無線LAN経由で自動的にストレージにアップロードされるというのが特徴だ。転送が終了するとメールで写真の保存先のURLが送られてくる。
ストレージに置いた写真は、PCのブラウザや携帯電話、iPhoneなどのスマートフォンなど、デバイスを選ばずどこからでもアクセスでき、自分のブログやmixi、Twitter、写真サイトなどに投稿できる。
CerevoCamは今秋発売。デザインと詳細なスペックはCNET Japan Innovation Conference 2009で初公開される予定だ。
慶應義塾大学の勝本雄一朗氏は、ユビキタスコンテンツを効率的に生み出すためのプラットフォーム「xtel」を紹介した。デモが披露された「雨刀」という傘は、振る度に「シャキーン」とか「カキーン」と音がする。必殺技も出せる。この傘を持っていると家までの帰り道が楽しくなるのだという。
xtelで作られたプロダクトは他にもある。花型のランプシェード「Fleur」は周囲の状況によって花が開くようになっている。実物の煙を使った装飾が施されたテーブル「a table with smoke texture」、どんな場所でも身の回りの音と動作を利用して自分たちだけの遊び場を作れる道具「サウンドキャンディ」などもある。
これらは9月15から17日まで開催される「ユビキタスコンテンツショーケース2009 - 生活に溶けこむコンテンツデザイン展 -」に展示される。
アクセス解析サービスを提供するユーザーローカル代表取締役の伊藤将雄氏は、同社のヒートマップ機能アクセス解析「User Insight」を紹介した。
User Insightは眼球運動と手の動きの相関に着目して開発された。マウスホイールの回転数、カーソルの移動量、実画面サイズ、操作時間などを元に、よくクリックされている場所、よく読まれている部分をヒートマップで表す。
9月にはブロガー向けに海外対応の無料ヒートマップ解析ツールを公開する予定だ。読者がどこをクリックしたか、記事のどの段落が読まれているかがわかるという。ヒートマップの結果は他人と共有することもできる。WISH2009の会場で1500人のモニターを募集することが発表された。
サイボウズ・ラボのブロガーで、日本のIT業界を紹介する英語ブログ「アジアジン」を運営するAkky Akimoto氏は、Twitterで読書記録するサービス「読んだ4!」をプレゼンした。
Twitterで“@yonda4”宛てに書籍のタイトルをつぶやくと、読んだ本を記録できる。「感想も記録できる。公開から5週間で6000件近い読書記録が寄せられているという。Akky氏はこのようにTwitterをプラットフォームとして利用することを「Twitter as a Platform(TaaP)」と呼ぶ。
デモでは新機能「Android向けバーコードリーダー」が披露された。Androidのバーコードアプリで本のバーコードを撮影すると、ISBNを読み取り、書名をつけてtwitterへ投稿できる。
ウェブ会議サービスやRSS関連サービスを提供するサイドフィード代表取締役の赤松洋介氏は、別会社を立てて運営する予定の新プロジェクト「Joker Racer」をプレゼンした。
Joker Racerはウェブブラウザからリアルタイムにラジコンを遠隔操作できるサービス。ラジコンにはLinuxサーバとウェブカメラ、マイク、無線LANを搭載。ラジコンからの映像を見ながらキーボードでラジコンを操作できる。
8月26日にベータ版を公開した。ユーザー登録すると先着順に、ラジコン操作に必要なポイントが無償で付与される。ラジコンマネージャーという肩書きのアルバイトを募集しているという。
ソニー銀行の河原塚徹氏は同社のインターネットサービス「人生通帳」を紹介した。人生通帳にはユーザーのお金の動きをまとめる仕掛けが組み込まれている。クレジットカード、ポイントサービス、銀行・証券、マイレージ、公共料金などの情報を1カ所に集めて管理する。
カレンダー機能を使うと、週末にATMを利用していたり、毎月25日に大きな買い物をしていたり、といったことを視覚化することができる。Googleカレンダーともデータ連携が可能だという。
日産自動車プログラム・ダイレクターオフィスの石川太一氏は、携帯電話の通信を利用したカーナビ向けナビゲーションシステム「日産カーウィングス」を紹介した。
カーウィングスは車の緯度経度、目的地の緯度経度、速度などの車両情報を元に、さまざまなコンテンツをRSSで配信する。「gogo.gs」で周辺のガソリンスタンドの価格を調べたり、Google マップと連携して位置情報を得たりできる。
ほかにも長野県の観光協会が情報発信していたり、高速.jpが車の位置情報と目的地情報を元に高速道路の料金を計算したりしてくれる。ちなみにCNET Japanもニュースを配信している。
RSS形式でデータを受け取れるため、ブログ記事も読める。Googleカレンダーにカーナビからアクセスし、音声で読み上げるといったことも可能だ。ゲーム機、iPhone、chumbyなどのようなネット接続ガジェットと同じ感覚で利用してほしいとのことだ。
三三の日比谷尚武氏は、名刺をウェブで管理するサービス「リンクナレッジ」を紹介した。リンクナレッジは名刺を人力でデータ化し、ウェブから管理できるようにする。
名刺に記載されている会社に関連したニュースがあればサイトに表示されるほか、キーワード検索機能も備える。キーワードに合致した会社が見つかると、その会社の名刺を持っている人のリストが検索結果に出る。統計グラフでは一定期間にどれだけの人に会っているか、どれくらいの規模の会社の人と付き合っているかなどを把握できる。
今後は名刺をよりソーシャルにする取り組みを進めるという。「名刺の束はあなたを語る。私の過去2年分の名刺を見ると、私のことがわかる」と日比谷氏は語る。交換した名刺のネットワークを図で表示される機能などを検討しているそうだ。
iPhoneアプリを開発するコニット代表取締役の橋本謙太郎氏は、iPhone向けコンテンツに課金するためのソリューションを紹介した。iPhone OS 3.0によって、iPhoneでも初回ダウンロード時以外にも課金できるようになった。ところが課金のシステムは開発者側で用意しなければならない。この部分を肩代わりしたのがコニットのソリューションだ。
このソリューションを利用すると、課金サーバを構築せずにコンテンツ課金が可能になる。過去に公開したアプリにも適用できるという。価格は初期導入費用が40万円から、アプリケーションごとに10万円からとなる。
事例として、毎号課金できる雑誌配信サービス、iPhone用スキンの着せ替えソリューション、ゲームのアイテム課金などを挙げた。
ブログ「百式」管理人の田口元氏は、未公開の新サービス「ACTION*PAD」を発表した。ACTION*PADは会議で使う約束管理ツール。会員登録は必要なく、管理者がURLとパスワードを教えると誰でも使える。
会議の議事録に残る「誰が」「いつまでに」「何をする」といった項目を入力して、それが確実に果たされるように管理する。リマインダーが任意の曜日、時間にメールを送ってくれる。もちろんモバイル版もある。
田口氏はACTION*PADで「日本の開発者を元気にしたい」と考えている。ユーザーに直接課金し、燃え尽きない開発を維持する。また直接課金を考えている開発者の参考になるように、サービス開発日誌をブログで公開していくという。ACTION*PADはすでにクローズドベータ版を開始しており、まもなく一般公開とのこと。
登壇者 | サービス、製品 | 賞 |
---|---|---|
ドレスファイル | ドレスファイル | BP.net賞 |
こくばんin | こくばん.in | |
サンゼロミニッツ | 30min. | |
ランゲート | Lang-8 | ITmedia賞 |
Cerevo | CerevoCam | Impress賞 |
慶應義塾大学 | xtel | Gizmodo賞 |
ユーザーローカル | User Insight | |
Akky AKIMOTO | 読んだ4! | |
サイドフィード | Joker Racer | WISH2009大賞 AMN賞 |
ソニー銀行 | 人生通帳 | |
日産自動車 | 日産カーウィングス | |
三三 | リンクナレッジ | |
コニット | iPhone用課金サーバソリューション | |
田口元 | ACTION*PAD | CNET賞 |
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