ワイヤレスとモバイルビジネスのイベント「ワイヤレスジャパン2009」で、ウィルコム、イー・モバイル、UQコミュニケーションズの3社が「移動体ビジネスと端末開発の将来ビジョン」と題した基調講演を行った。
ウィルコム代表取締役社長の喜久川政樹氏は、同社が展開する次世代PHS「WILLCOM CORE XGP」を紹介した。XGPは下り10Mbpsを超えるスピードが出ていることが評価されているという。
「ワイヤレスでは公衆型で一番速い。上りも非常に速い。ウィルコムが言っていたとおりのスピードが出ている」(喜久川氏)
XGPが高速である理由として「TDD」「スマートアンテナ」「256QAM」という3つのキーワードを挙げた。TDDとはTime Division Duplexの略で、上りと下りで時間分割して同じ周波数を使用する技術のことだ。国際的な周波数配置が比較的容易、同じくTDDの採用を進めている中国との協調が取りやすい、スマートアンテナとの親和性が高いといった利点があるという。
スマートアンテナは電波状況に応じてフレキシブルに出力パターンを変更する技術。これにより周波数帯域を効率よく利用することができるという。
256QAMはディジタル変調方式の1つで、信号あたりに乗せられるデータ量が多いため、伝送速度が速いという特徴がある。XGP以外の移動体通信の方式では256QAMは採用されていないが、XGPではスマートアンテナやマイクロセルの採用によって実現可能となっている。
今後はXGPならではのアプリケーションが期待されるという。自宅で固定ブロードバンドを代替したり、街中の固定カメラや業務用の映像伝送として利用したりといった用途が例として挙げられた。
イー・モバイル代表取締役社長兼COOのエリック・ガン氏はイー・モバイルの事業戦略について語った。
エリック・ガン氏は、「モバイルブロードバンドは1人1契約する。1世帯1契約が基本の固定ブロードバンド市場より規模が大きくなる」と述べた。2007年にサービスを開始したイー・モバイルは、2009年6月末時点で167万2000回線を提供している。
1カ月平均8万回線のペースで契約数を増やしており、2008年は年間100万回線を達成した。2009年も第1四半期で26万回線と好調だ。
「当初、解約率はかなり高いと思っていた。ADSLの解約率は1.8%くらいだが、モバイルの方が上回ると考えていた。だが、おかげさまで1%前後という低い水準を維持しており、固定回線の半分程度で済んでいる」(エリック・ガン氏)
2009年4月に上り5.8Mbps(HSUPA)を提供開始し、8月にはHSPA+で21.6Mbpsを開始するとしている。主要都市から順次展開し、12月までに人口カバー率60%を目指す。地下鉄、地下街も首都圏から21.6Mbps化していく。月額580円から利用できる。
UQコミュニケーションズ代表取締役社長の田中孝司氏は、7月1日から本格スタートしたモバイルインターネットサービス「UQ WiMAX」を紹介した。
同氏はWiMAXを、「モバイルでもきちんとインターネットを使えるようにする規格」と定義づけた上で、現状の携帯電話から接続するウェブは「きちんとしたインターネットではない」と切り捨てた。
「ネットはクラウドサービスが主流。PC本体はプレゼンテーション機能だけでいい。ブラウザだけ立ち上げて、データはネットの向こうにある。同じことをモバイルでも実現するには、回線にスピードが必要。真のモバイルインターネットはもっとスピードを求めなければいけない」(田中氏)
UQ WiMAXの特徴は、下り最大40Mbps、上り最大10Mbpsの高速大容量と、接続・切断を意識せずに利用可能できること。ウェブアプリ、SaaSの普及、情報セキュリティへの関心、効率化・コスト削減への取り組みといったトレンドが、このようなUQ WiMAXの長所に合致しているという。
課題のサービスエリアは、2月から提供中の首都圏に加え、7月1日より中部圏、関西圏にも拡大した。料金プランは定額使い放題の「Flat」(月額4480円)のみ。10月からは24時間利用できる「1Day」(24時間600円)も提供する。
利用者からはサービスエリアの充実を望む声が多いという。2009年度末に全国政令指定都市(人口カバー率55%)に拡大し、2010年末には全国主要都市(人口カバー率76%)へ拡大する計画だ。総務省へ申請した計画よりも前倒ししたエリア展開を進めていくとしている。
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