実際、最終戦に勝ち残ったブラジル、ポーランド、ルーマニア、ロシア、スペイン、台湾の6チームのプレゼンテーションを見た前山氏も「ベスト6のチームに大幅に差をつけられたとは思わない。ただ、残ったチームは確かに評価基準をきっちり満たしていたと思う」と話す。また、中島氏は「僕たちの作品は地味に見えたかもしれない。インパクトのあるデモをするなど、見ている人を驚かせるような見せ場がなかった」と振り返る。
一方、企業メンターとしてNISLab++をサポートした学びing 技術アドバイザーの下大園貞寛氏はNISLab++の作品について「技術的には上位と比べて特に大きく差があるとは思わなかったが、NISLab++はコンシューマーに向かい合っていない気がした」と指摘する。「上位チームを見ていると、まずはユーザーニーズを第一に考えるところからスタートしている。組み込み開発部門に出展した韓国チームの昆虫育成システムなどがいい例だ。NISLab++も、まずニーズをより深く調べてから始めるべきではなかったかと思う」と下大園氏。
下大園氏が例に挙げた韓国チームの作品は、3年もの年月をかけて取り組み、実地検査まで行ったものだ。また他国代表の中には、技術系の学生以外に医療関係のスペシャリストをメンバーに入れたチームも存在した。このように「実際の調査結果を含めて結果を出すには1年では短すぎるし、今後はメンバー構成もテーマによって考える必要があるのかもしれない」と下大園氏は語る。
さらに下大園氏は、「このプロジェクトを一生をかけてやっていきたいという本気度も勝敗に大きく影響するだろう。困った人を本気で助けるための研究をずっと続けたいと考え、その通過点としてImagine Cupがあるとすれば、もっと有利な戦いができる」とした。
2年に渡って続いたNISLab++の世界への挑戦は終わった。メンバーの加藤氏、中島氏は卒業後の就職先もすでに決まっており、NISLab++としてImagine Cupに関わるのはこれで最後となる。
一方の前山氏は、米国を含め次の進学先が決まるまで同志社大学を休学中だ。来年もImagine Cupに参加するかとの問いに、「(どこにいるかわからないが)状況が許せばまた参加したい」と話している。また、すでに京都大学の博士過程へと進学した門脇氏は「今の大学で参加メンバーを募り、今度はメンターとして小板先生と勝負したい」と笑う。
この2年間を振り返って加藤氏は、「大学院生活はImagine Cupにほとんどの時間を費やしたが、この大会に参加したことで自分が大きく成長できたと実感している。この体験は後輩にも伝えていきたい」と語る。中島氏も「この大会で、本当にいろんな経験ができた。今後は後輩をサポートするなどしてImagine Cupに関わり続けたい」とした。
現在同志社大学では、NISLab++に続くべくすでに5つのチームが結成され、Imagine Cupを目指して活動を開始しているという。メンターとして2年間チームをサポートした小板氏も「優勝チームが出るまでサポートしていきたい」と意欲的だ。NISLab++の果たせなかった日本チームによる世界大会での上位入賞が実現するのは、そう遠くないのかもしれない。
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