実は、地域キャラは大変な量が産出されています。新聞やTVなどで取り上げられているものは氷山の一角に過ぎません。映画やテレビ番組のロケーションを縁にした、地域とコンテンツの連携も数多くあります。これらの中の、ごく僅かな事例が顕在化し、継続的に地域振興に活用されているというのが現状です。
上記の例を含む成功事例を眺めていると、一定の傾向が見えてきました。それは、次のようなものです。
一方で、「自ら作った(公募した)キャラだから、自由に使ったり、第三者に使ってもらったりしても構わないだろう」と考えてしまうのも問題があります。
そもそも、利用を野放しにしているようでは、一貫性を損なってしまいブランドとして確立できません。また、ライセンス契約の不備や、監修手続きの不履行によって、許諾をする側と許諾を受ける側との関係が良好に保たれない場合もあります。
やはり最初からライセンシングビジネスとして認識し、コラボレーションをスタートさせるのが一番のようです。
特定の地域を舞台としたコンテンツのファンが、その舞台となった地域を訪れるという行為そのものは、極めて私的な活動に過ぎません。ブームとなって、そのような事例が集まると、「社会現象」に見えてきますが、あくまで「私的な活動」の集合であることを忘れてはいけません。このようなボトムアップのムーブメントを、事業者が「操作」しようとすると拒否反応が強いことが予想されます。
あくまでユーザーに対する「おもてなし」として活動を始め、ユーザーと一体になってサービスを構築していった事例は、ブームが永続化しているようです。
グッズ展開に代表されるような商品化(マーチャンダイジングとも呼ばれます)には、アパレルも当然含まれます。また、ボトムアップ型のムーブメントの事例として、これまえ扱ってきた例(渋谷系セクシーカジュアルブランドなど)との類似点も多く見つかることでしょう。むしろ、SHIBUYA109で起きたムーブメントも、地域コンテンツの一例としてとらえることすらできるかもしれません。
このようにみてきますと、地域キャラ、ゆるキャラ、聖地巡礼(オタクツーリズム)といった試みを分析することで、現在のユーザーの消費行動の特性を巧みに捉えた、新しいコンテンツの在り方が見えてくるような気がします。これらは、コンテンツのボトムアップ型の消費スタイルの事例になるのではないでしょうか。
また、地域とコンテンツに関連した話題として、2009年4月にジャパン・フィルム・コミッションという全国のフィルムコミッションの連合組織がスタートしました。他にも日本動画協会を中心として、地域アニメ、マンガミュージアムの連合会を作ろうという企画も進行中です。そのような場で、地域とコンテンツの連携による成功事例やノウハウが実務者の間で共有され、全体のレベルアップに結び付くことが望まれます。
東京大学大学院情報学環准教授。1970年静岡生まれ。博士(工学)。ネットワーク解析など数理的手法を用いて、知識の生産と伝播によるイノベーションを研究。コンテンツビジネスにおける能力形成のモデル化や企業の戦略分析を行うとともに、プロデューサ育成も行っている。特にアニメ・動画には造詣が深く、また、UNIX技術本の翻訳なども手がけている。2008年度はキャラクタービジネス研究で注目を集めた。
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