ソフトバンクは4月30日、2009年3月期の通期連結決算を発表した。また、約2兆円の純有利子負債を2015年3月期までにゼロとし、それまでは大規模投資をしない考えも明らかにしている。
売上高は、携帯電話端末の販売減やソフトバンクBBのADSL事業の接続回線数が減少したことなどにより減収となった。営業利益については、子会社であるソフトバンクテレコムやヤフー、ソフトバンクBBが貢献して増益となっている。
ソフトバンクモバイルを中心とした移動体通信事業は、端末の販売台数が842万台と前年を下回ったことなどから、売上高が前期比4.2%減の1兆5629億円、営業利益は同1.8%減の1714億円と減収減益になった。また、ソフトバンクモバイルの発行済み普通社債について、追加信託損失として750億円を特別損失に計上している。
解約率は1.00%となり、前期に比べて0.32ポイント改善した。「新規顧客が多いため、他社に比べて解約率は高い。また、今期に第2世代携帯電話サービスを終了して電波を総務省に返上するため、今期はこの解約も加わるだろう」とソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は話す。対応施策として、2年契約の自動更新を導入する検討をしているとのことだ。
契約者1人あたりの平均利用料にあたるARPUは前期比12.5%減の4070円で、うち音声ARPUが同26.3%減の2320円、データARPUが同16.8%増の1740円となった。顧客獲得手数料の平均単価は4万5300円となっている。
Yahoo! BBなどのブロードバンドインフラ事業は、売上高が前年同期比8.9%減の2352億円、営業利益は同19.0%増の472億円。販売費用を抑えたことや、通信設備の減価償却費、支払いリース料などが減ったことで大きく利益が伸びた。「Yahoo! BBは(ビジネスとして)完全に収穫期」と孫氏は話しており、投資を抑えて利益を得る構造のようだ。
ソフトバンクテレコムを抱える固定通信事業についても、売上高は前期比1.9%減の3636億円、営業利益は同467.9%増の190億円となった。固定費を削減したほか、「おとくライン」「Etherコネクト」など利益率の高いサービスの回線数が増加したことで、利益が増えているとのことだ。
ソフトバンクは現在フリーキャッシュフローを重視した経営をしている。2008年3月期のフリーキャッシュフローは1642億円の赤字だったが、2009年3月期には1815億円の黒字となった。これを今後3年間の累計で1兆円へと増やす計画。
孫氏は、「ヤフーが連結フリーキャッシュフローに貢献しているのは年間700〜800億円。それ以外はソフトバンクグループの100%子会社から収益を吸い上げる形になる。連結フリーキャッシュフローを上げるための資金還流の方法、事業収益を吸い上げる方法は何通りもある。ソフトバンクテレコム、ソフトバンクBB、ソフトバンクモバイルとも私が代表取締役を務めており、利害は相反しない。近い将来合併させることも含め、方法はある」と話し、キャッシュフローを上げるためにグループを再編することも視野に入れているとした。
また、純有利子負債が2009年3月末時点で1兆9395億円あるが、これを2012年3月末までに1兆円以下に、2015年3月末までにゼロにする計画も明かした。それまで大規模な投資はしないと孫氏は明言する。
ライバルのNTTドコモやauは高速無線通信規格のLTE(Long Term Evolution)への投資を明らかにしており、NTTドコモは2010年、auは2012年ごろにサービスを開始する計画。ソフトバンクモバイルは「2〜3年以内に投資を始める」(孫氏)とし、投資額については「1000億円は超えるだろうが、何年かに分けて投資する。年間の額としては極端な規模にならない」(孫氏)との見通しを示した。
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