「(2007年に発表した中期経営計画)『チャレンジ2010』で掲げた、営業収益(売上高)4兆円、営業利益6000億円という目標達成は、正直無理だと判断している」――4月23日に東京都内で開催された2009年3月期連結決算の発表会において、KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏はこのように述べ、2年前と大きく市場環境が変わり、当初の目標を達成できないとの見解を示した。
これは、記者団からの質問に答えたもの。原因については、「見通しが甘かった。(端末価格と通信料金を分けて表示する)分離プランの導入は想定外だった。どこで(計算が)狂ったかと言えば、携帯電話の売り上げが落ちたことが大きい」(小野寺氏)とし、端末価格を安くして月々の通信料金で費用を回収する旧来のビジネスモデルが総務省の要請でできなくなったことが理由だとした。
ただし、「固定通信の黒字化については、何としてもやらないといけないと思っている」「新規事業で2000億円の売り上げを創出すると言いったが、こちらはいけそうだ」(小野寺氏)とも話し、携帯電話事業以外は順調であるとした。
2009年3月期の連結決算は、携帯電話の販売台数が減ったことで営業収益は前期比5%減の2兆7192億円となったものの、端末の販売手数料が減ったことで営業利益は同10%増の5015億円と大きく伸びた。販売台数は前期比32%減の1081万台となっている。
「端末の販売台数が急激に減少したことで、在庫が積み上がった。発注コントロールや廃棄損の計上などにより在庫調整をし、期末の在庫は前期比39万台増の169万台に抑えた」(小野寺氏)とのことで、257億円の端末評価減、廃棄損を計上している。また、端末1台あたりの販売手数料は3万9000円となり、前期に比べて2000円増えた。
固定通信事業については、ジャパンケーブルネットホールディングス(JCN)の業績をセグメントとして加えたことなどにより、営業収益は前期比18%増の8487億円となった。営業損失は赤字幅が81億円縮少し、566億円の赤字となっている。
2010年3月期については、営業収益が前期比0.5%減の3兆4800億円、営業利益は同6%増の4700億円と見込む。auの累計契約数は76万件純増の3160万件としており、端末の販売台数は1000万台を目標とする。「メーカーや販売店のことを考えると、1000万台が水準だと思う。これを下回らないようにどうやってまわしていくかが課題だ」と小野寺氏は話した。
販売代理店への施策については、「1機種あたりの販売数量は減ると思う。その中で、販売代理店とエンドユーザーの接点を増やして販売店に来る人の量を増やし、固定通信系の商品を販売してもらっている。例えば、現在は携帯電話端末より、ひかりoneホームの販売手数料を多く払っている。携帯電話であれば代理店は在庫を持たないといけないが、ひかりoneを売るのであれば在庫もいらない。このように、代理店の商材を増やすことで彼らの経営を支えていきたい」(小野寺氏)とのこと。
このほか、第3.9世代携帯電話サービス「LTE(Long Term Evolution)」を2012年に導入するまでの間に、現行システムの高速化をマルチキャリア化という技術で実現する構想も明らかにした。「既存のシステムのソフトアップグレードで対応でき、周波数利用の効率化が図れる」(小野寺氏)というのがその理由だ。LTEは2011年に実施される周波数再編後のサービス開始を考えているといい、「800MHz中心でやりたいが、周波数再編後でないと10MHz幅が空かない。5MHz幅で速度を落としてサービスを開始することは考えていない」(小野寺氏)とした。なお、ライバルのNTTドコモは2010年以降にLTEを商用化する計画を進めている。
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