不況期に立ち上がる企業こそ成長する、投資家にとって今は「好機」--DCM伊佐山氏(前編)

 金融危機に端を発した世界的な不況は、国内のITベンチャーにも影響を与えている。このような状況を、ベンチャーキャピタルはどのように見ているのだろうか。連載第1回目となる今回は、2009年1月に日本オフィスを構えたDCM(旧:Doll Capital Management)パートナーの伊佐山元氏に話を聞いた。

--ベンチャーキャピタルとして、現在の経済情勢をどうとらえていますか。

 マクロ的なことで話すと、1990年代のバブルがはじけたころというのはIT業界が否定されたような崩壊の仕方で、われわれベンチャーキャピタリストにとっての心理的ダメージは、今回の金融危機よりはるかに大きかった。通信もダメ。半導体もダメ。インターネットもダメ。IT業界には次に何があるのか見えなかった時代でした。

DCMパートナーの伊佐山元氏 DCMパートナーの伊佐山元氏

 当時は、ベンチャーキャピタル(VC)としては何も投資できなかった。何が新しいイノベーションなのか、何も見当たらないようなIT業界を直撃したバブルでした。それに比べると、今回の不況は金融、証券化市場を発端としたバブル。半導体業界が完全にダメになったとか、通信業界がダメになったというのではありません。われわれが去年の前半に考えていた投資テーマはどれも存続しています。

 VCのマインドセットとしては、前回のバブルの方がよっぽどつらかったし、光が見えなかった。今回はこの先、何が起こるかはわれわれにはクリアに見えている。だから今は絶好の投資のチャンスじゃないかというのが、社内での一致した見方ですね。

--IPOの数も減り、投資回収も難しいとみる向きが多い。今、日本に拠点を設けたのは時期が悪いとの見方もあります。

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