「Infinity Ventures Summit(IVS) 2007 Fall」初日のキーノートは、アジアを代表する有力ネット企業の事例を見ることで、サービスのグローバル展開やローカライズにおける重要点を探る試みをした。グローバル展開に成功できなければ、世界に通用する企業としての成長はない。
「Asian Ventures - SINAとSK Communicationsの成長の軌跡」と題し、DCM General PartnerのHurst Lin氏、SK Communications Executive Vice PresidentのJung Ho Park氏が登壇。モデレーターはAdobe SystemsのDirector of Investmentsである田中章雄氏が務めた。
Hurst氏は中国を代表するネットサービス企業SINAの創業メンバー。同社最高執行責任者として、中国国内3位のサイト、時価総額3000億円以上へと成長をけん引した。
SINAはNASDAQに最初に上場した中国の企業で、ポータルサイトとしてはニュースサイトを最初に手がけ、中国1位のニュースサイトとなってこれに競合他社も追随してきた。
Yahooに勝てたのは、中国人はそれぞれのニュースをクリックして見るよりも一覧性を好むという傾向を生かし、1ページにすべてのニュースを詰め込んだことが大きな要因となった。また、中国で無料メールを最初に始めたことも大きかった。
コミュニティを活用した検索やブログも手がけており、有名人や政治家に書いてもらうことなどで差別化。最近ではビデオブログなども手がける。
SK CommunicationsはSK Telecomの子会社で、韓国最大手のSNSであるCyworld、そのほかにもポータルサイトのNate.com、検索のEMPAS、インスタントメッセンジャー(IM)のNateOnなど韓国で十指に入るサービスを多数持つ。
中でも世界でNo1のIMだとするNateOnはMSN messengerの3倍のユーザーがいるとしており、また、教育関連サービスなどにも参入していて、すでに国内2位の地位にあるとしている。
電話会社を親会社に持つ優位性を生かしてPCと携帯の両方でサービスを展開。現状ではNateOnに新たな付加価値をつけたビジネス展開や、グローバルスタンダードのプラットフォームを構築し、世界各国でそのローカライズをして世界戦略を軌道に乗せていきたいと考えている。
両社共通するのは世界でさまざまな競合他社が国内に進出してくる中、国内企業の強みを生かして大きな成長を遂げたこと。
サービスのローカライズやグローバル展開について質問すると、Hurst氏は「ネットは国の文化が色濃く反映するので、UIなど些細なことが大きく影響する。だから外資系企業はあまりうまくいかない。しかも重要な意思決定権は本国にあるので、どうしても意思決定が遅れる」とした。Park氏は「外資系企業ではローカルでいい人生を見つけるのは難しい。SKも一生懸命国外の成功モデルを模索しているが非常に難しい」と答えた。
さらに、「自分がYahooの幹部なら中国と韓国をどう攻めるか」と両氏に質問すると、Hurst氏は「重要なのは中国ですべて意思決定をすること。米国中心をやめさせる」と指摘。Park氏は「ローカルで英語が話せるいいマネジメントチームを採用すること。それと韓国式のやり方を貫かせること」とした。
問題解決の一手法として、ローカルの人材や有名人を経営者に採用することの重要性については、Hurst氏が「中国人のCEOは必要。ただ有名人CEOの重要性はない。最も重要なのは商品にユーザーの声を反映させること。中国でも携帯電話と車の有力企業に中国の企業は入っていない。やはり商品力ありき」とし、Park氏もこれに同意した。
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