アニメ「電脳コイル」や芸者東京エンタテインメントの電脳フィギュア「ARis」の登場でも注目を集めている拡張現実(Augmented Reality:AR)をテーマにしたカンファレンス「ITproビジネス・カンファレンス『AR(拡張現実)ビジネスの最前線』」が2月26日都内にて開催された。
基調講演には、東京大学大学院情報学環大学院情報学環教授であり、クウジット技術顧問を務める暦本純一氏が登壇。国内AR研究の第一人者でもある暦本氏は、「ARの可能性と未来」と題して自身がこれまで携わってきたAR技術を紹介しつつ、その可能性について語った。
暦本氏はまず、ARについて「映画『ターミネーター』やアニメ『ドラゴンボール』のスカウター、『電脳コイル』(の電脳メガネ)などSFの世界では繰り返し表現されてきたが、あくまで現実をテクノロジーによって増強・拡張する技術」と説明。現在トレンドとなっているような、現実と仮想の情報をオーバーレイする技術はARの一部にしか過ぎないと説明する。
また、いわゆる仮想現実(Virtual Reality:VR)との区別について「Virtual Realityはコンピューターの世界で情報を閉じてしまう技術。一方でARは、現実世界を自然に見た時に(視覚以外の)情報をコンピューターが強化する、人間強化型の技術」と語る。
ARの研究の歴史は長い。かつて1960年代には米国のコンピューター科学者Ivan Sutherland氏が「The Ultimate Display」と呼ぶヘッドマウントディスプレー(HMD)を開発。これが最初のVRやARとも言われている。その後1993年にはコロンビア大学で「KARMA」と呼ばれるARを利用したシステムが開発された。これは超音波センサーを使って、レーザープリンタの目視できない内部機構をHMDに表示し、保守をサポートするシステムだ。
このように古くから研究されてきたARだが、その本質は、利用者の周囲の状況をコンピューターが察知し、最適な情報を提供する「Context-Aware Computing」を実現するための1つのインターフェースだと暦本氏は説明する。
同氏はこれまでソニーコンピューターサイエンス研究所でARの研究を進めていたが、1994年にはハンドヘルト型のAR向けデバイスを開発する。「NaviCam」と名付けられたそのデバイスは、カメラと液晶モニターを組み合わせたもの。画像表示の処理などはデバイスとケーブルで接続されたワークステーションで行っていた。
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