成井:最後に石井先生のデジタル時代の著作権法についてのお考えをお聞かせください。
石井:著作権は自動発生してしまうものです。当面は、契約を活用して対応せざるを得ないでしょう。立法論になってしまうかもしれませんが、デジタル時代においては、著作権法などの法律で強く縛るのではなく、技術と市場が決めて行くようにするのがいいと思っています。
たとえば、以前コピー防止CDというのが出ましたが、もうほとんど売られていません。ユーザーのニーズに合っていなかったのです。ユーザーと会話しながら、適切な技術的手段を考えていく。市場が判断すればいいことだと思います。規制的な発想だけでは動いている技術とユーザーのニーズについていけません。
法律による解決ばかりを追い求めないで、もっと技術と市場に任せた方がいいのではないでしょうか。そのために使いやすく柔軟なDRMが欲しいですね。ユーザーが使っていて意識しないものがいいと思います。
コンテンツあるいは情報は、本質的に媒体と不可分なものです。媒体は古くは「人」のみでしたが、文字が発明されて情報が人から切り離され、紙が発明され、印刷機が発明され、近年になってレコード、音楽テープ、CD、ビデオテープ、DVDと出てきました。
技術は発展してきましたが、コンテンツ、情報と媒体とは結びついています。しかし、デジタル化とPC、インターネットの普及は、この結びつきをきわめて弱いものとしました。MP3データは、CD-ROMに焼かれていても、ハードディスク上にあっても、SDカードやiPodに記録されていても、たいした違いではないのです。
私はこれを、「情報が媒体から解放された」と表現しています。iTunesにより、CDという媒体を買うことなく、音楽というコンテンツそのものを購入することができるようになったのです。これまでのビジネスも著作権法に代表される法制度も、媒体との結びつきを前提に媒体を通してコンテンツ、情報をコントロールしようというものだったと言えるでしょう。
その前提が根本的に変わりつつあるのです。コンテンツあるいは情報にとって歴史的な出来事が進行している中、これまでの法律の延長線上で規制しようというのは無理があると考えています。
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