対談:デジタル著作権ってどうなってるの?(後編) - (page 4)

成井:最後に石井先生のデジタル時代の著作権法についてのお考えをお聞かせください。

石井:著作権は自動発生してしまうものです。当面は、契約を活用して対応せざるを得ないでしょう。立法論になってしまうかもしれませんが、デジタル時代においては、著作権法などの法律で強く縛るのではなく、技術と市場が決めて行くようにするのがいいと思っています。

 たとえば、以前コピー防止CDというのが出ましたが、もうほとんど売られていません。ユーザーのニーズに合っていなかったのです。ユーザーと会話しながら、適切な技術的手段を考えていく。市場が判断すればいいことだと思います。規制的な発想だけでは動いている技術とユーザーのニーズについていけません。

 法律による解決ばかりを追い求めないで、もっと技術と市場に任せた方がいいのではないでしょうか。そのために使いやすく柔軟なDRMが欲しいですね。ユーザーが使っていて意識しないものがいいと思います。

 コンテンツあるいは情報は、本質的に媒体と不可分なものです。媒体は古くは「人」のみでしたが、文字が発明されて情報が人から切り離され、紙が発明され、印刷機が発明され、近年になってレコード、音楽テープ、CD、ビデオテープ、DVDと出てきました。

 技術は発展してきましたが、コンテンツ、情報と媒体とは結びついています。しかし、デジタル化とPC、インターネットの普及は、この結びつきをきわめて弱いものとしました。MP3データは、CD-ROMに焼かれていても、ハードディスク上にあっても、SDカードやiPodに記録されていても、たいした違いではないのです。

 私はこれを、「情報が媒体から解放された」と表現しています。iTunesにより、CDという媒体を買うことなく、音楽というコンテンツそのものを購入することができるようになったのです。これまでのビジネスも著作権法に代表される法制度も、媒体との結びつきを前提に媒体を通してコンテンツ、情報をコントロールしようというものだったと言えるでしょう。

 その前提が根本的に変わりつつあるのです。コンテンツあるいは情報にとって歴史的な出来事が進行している中、これまでの法律の延長線上で規制しようというのは無理があると考えています。

略歴
成井秀樹
アスキーにてMS-DOSなどマイクロソフト製品の日本市場導入にかかわり、西社長(当時)やビル・ゲイツ(当時)から薫陶を受ける。1999年アイドック株式会社を創業、2005年PDFコンテンツの著作権保護ソリューション「KeyringPDF」を開始。2007年、国内初のSaaS型Flashコンテンツ保護ソリューション「KeyringFLASH」を開始した。デジタル著作権保護の第一人者。趣味はフライフィッシング、東京外国語大学卒、東京都出身。現在はアイドック株式会社 代表取締役を務める。

略歴
石井邦尚
パートナー弁護士。2004年8月にリーバマン法律事務所を開設。前所属事務所では、一般民事事件の他、企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産、倒産などを扱い、特にIT関連事業に関する法務に多く取り組む。2002年からアメリカへ留学し、会社法分野と知的財産権法分野を中心に学ぶ。帰国後に独立してリーバマン法律事務所を設立し、「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべく、日々取り組む。

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