対談:デジタル著作権ってどうなってるの?(後編) - (page 3)

成井:著作権自体がとても属人的なものになってしまっているということでしょうか? そのために、人によって許諾が変わる場合が出てくると。

石井:先ほどの絵画の例では、嫌なら売らなければいいというのが一般の人の素朴な感想でしょう。買ったものを転売するための行為がなぜ自由にできないのか。一度売ったものを後でどうこうすることを、どこまで認めるのかという問題です。

 著作権のほかに、著作者人格権というものがあります。作者が生きている限り存続し、譲渡することも相続することもできず、条文上は放棄もできないとされています。可能なのは、契約でこの権利を行使しないことを約束することくらいです。

 著作者人格権は日本では特に強い権利で、典型例は作者の望まない形で改変されない権利、名誉を守る権利などで、たとえば勝手に猥褻にされないということです。人格権なのですが生身の人間と違って法人著作物の場合は人格権は個人から離れていて、普通の人格権とは違うはずです。

 譲渡も放棄もできない権利というのが問題で、著作権を譲渡しても、著作者人格権は著作者に残るのです。学者の中には、著作者人格権を柔軟に、いわば条文の文言をそのまま読んだ場合よりも弱く解釈すべきというような考え方も有力です。

成井:ところで、「フェアユース」とはどのような考え方なのでしょう。

石井:原則として著作権侵害になる行為でも、例外的に侵害とされない場合があります。日本の著作権法では、その例外が著作権法の条文で列挙されており、その例外に該当しない場合は原則どおり著作権侵害とされます。

 一方、米国では、そのような例外規定のほかに、フェアユースという包括条項が設けられています。直訳すれば「公正利用」となるでしょうか。日本のような規定の仕方は、明確であるというメリットがある一方、硬直的で、時には時代ないし技術の変化についていけないというデメリットが指摘されます。

 フェアユース規定のメリット、デメリットはその逆です。実は、フェアユースに関する米国でもっとも有名な判例の1つは、ソニーのベータマックスの事件です。ソニーががんばって勝ちましたが、それには莫大な労力と資金、長い時間が費やされており、「10年戦争」と呼ばれることもあります 。新しい技術を柔軟に許諾するというメリットがある一方、あいまいさが残るために時には訴訟の負担が大きくなるということを示す好例です。

成井:検索エンジンなどもフェアユースで許されているという主張があります。Googleなどはウェブページの情報を集めてコピーしていても、本来の著作者の権利は侵害していないのでは?

石井:コピーすることは技術的に避けることのできないことで、作者の権利を不当に侵害してはいないように思います。コンピュータを利用する際に、一時的にメモリー上にデータがコピーされるというのとそれほど変わらないのではないでしょうか。

 しかし、日本の著作権法では著作権侵害とされる可能性がある。米国でも、法律で明確にOKとされているわけではありませんが、フェアユース規定があるため、フェアユースに該当するということを前提にビジネスを展開している。

 もちろん、ソニーのように長期間訴訟に巻き込まれるリスクも抱えているわけですが、そうしたリスクも計算した上で、なおビジネスにチャレンジするという選択ができるのです。

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