IPTV普及の鍵はネットの広告配信手法が握る - (page 2)

執筆:金澤大輔 アドバイザー:福島慎一 監修:海老根智仁(株式会社オプト)2009年02月20日 17時35分
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日本でIPTVを普及させるためには?

 インターネットを例にみると、mixiやYouTubeなどの新しいコンテンツが日本のユーザーに受け入れられ、爆発的に利用者を増やした理由の一つは「無料」であったことです。また、米国のIPTVの事例を具体的にみても、同様のことが言えそうです。

 ベータテストを経て、2008年3月に米国News Corp.と米国NBC Universalが正式にサービス提供を開始したプレミアム動画サービス「Hulu」も広告収入主体で運営されているIPTVの一つであり、YouTubeを超える存在として注目されています。

 このサービスは、親会社であるNews Corp.およびNBC傘下のテレビ局や映画会社のほかWarner Bros.やNBA、NHLなどのメジャーコンテンツプロバイダーと契約を結んでおり、利用者は人気TV番組や映画、ビデオクリップなどをVOD方式にて高画質かつ合法で、いつでも無料で楽しむことができ、利用者も爆発的に伸びているそうです。

 現状、IPTVの収益モデルには広告、物販手数料、ダウンロード課金、プラットフォーム利用料などがあります。複数の収益ソースを持つことの重要性も理解できますが、利用者の絶対母数を増やすという視点では、中でも「視聴/コンテンツの無料化」へ向けた取組み、すなわち広告収入について、もっと積極的に検討していくべきと考えられます。

IPTVでの新広告収入モデル--注力すべきは「行動ターゲティング」

 しかし、参考までに従来のテレビ広告市場を見てみると、広告主の予算削減、TVCMのスキップ機能、ながら視聴の増大などから、広告費は減少傾向にあります。また、減少傾向という点では、その他マスメディアも同様です。そのような中、反対に増加傾向にあるのがインターネット広告です。

 現在のインターネット広告の配信技術は、従来のTVCMのそれより圧倒的に技術革新が進んでおり、広告主のニーズに合わせた配信が可能になっています。

 例えば、Yahoo! Japanなどメガポータルサイトのトップページへの大量露出/リーチや、年齢、性別などのようにセグメントをかけて掲載するターゲティング広告などの従来手法に加え、近年ではさらに進化して、ユーザーのサイト上の行動や購買、検索履歴から分析して広告配信をする行動ターゲティング広告も一般的に利用されています。

 この“ユーザーと広告主をマッチングさせ行動履歴から広告を配信する”行動ターゲティング手法こそ今後のIPTV時代の鍵だと思います。

 現状のTVCMの配信は、番組の属性、時間帯、視聴率及びGRP(Gross Rating Point)などをもとに、タイムやスポット方式による番組のCM枠を広告主が買うという枠買いを基本として、視聴率会社や広告代理店などが蓄積している視聴率、視聴者プロファイルなどのデータをもとに、経験則による手作業的なメディアプランニングにより枠の購入が計画されています。

 また、実際のところ、IPTVでもメタデータ(視聴/行動履歴)をベースとしたターゲティング広告の研究、開発は進んでおり、海外でも実装を開始している会社もありますが、現在のインターネット広告の配信技術は、数歩先を進んでいます。

 マルチキャスト型での放送再送信の場合、テレビのタイム広告は番組制作費の捻出元である提供スポンサーへの配慮もあり、すぐに行動ターゲティング手法を取り入れるのは難しいかと思います。

 しかし、スポット広告枠およびVOD配信時に露出される広告枠であれば、ネットの世界でどんどん進化しつづけているこの行動ターゲティング手法を導入し、IPTV内の視聴者の行動履歴や趣味嗜好をリアルタイムでマッチングさせ、より消費者のニーズに合った効率的な広告配信を行うことも可能になるでしょう。これはテレビやPCなどデバイスを越えた部分での融合も含みます。

 消費者インサイトに触れる可能性が高まるわけですから、TVCMをスキップするユーザーも減り、CMの価値自体も向上するのではないでしょうか。

 結果、広告価値が向上して広告主の出稿ニーズも高まり、「無料化」が進み、日本でもIPTVは爆発的に普及するかもしれません。さらには番組部分だけではなく、IPTV内でのネット検索やサイトの閲覧を含めた行動履歴もマッチングさせた配信が可能になれば、よりターゲティングの精度が高くなるため広告主にとって外すことの出来ないものに組み込まれるのではないでしょうか。

 また、発展形として、各テレビ局内の様々な番組の広告枠を繋ぎ、同様の仕組みでランダム配信できる「アドネットワークの構築」も可能になるかもしれません。これが実現できれば、広告配信手法のみでなく、番組制作予算のあり方を含む業界の従来モデルの変革にも影響を与えるかもしれません。

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