「何とか続けられないかと手を尽くしてきたが、将来を考えて続けていけないと判断した」。2月12日、ディスプレイ事業からの完全撤退を正式発表したパイオニア取締役社長の小谷進氏は、記者会見上でこの言葉を繰り返した。
2009年3月期第3四半期(2008年10月〜12月)の決算で、プラズマテレビを含むホームエレクトロニクスの営業収入は前年同期比48.8%減の515億円、営業損益は97億円の赤字となった。
2008年3月には、プラズマパネル生産からの正式撤退を発表。2009年3月末には国内パネル生産拠点、4月までには英国、米国の海外プラズマテレビ生産拠点を閉鎖し、事業構造改革を進めてきた。
生産から撤退したプラズマパネルは、パナソニックから供給を受けることで事業を継続し、資本・業務提携関係にあるシャープからは液晶パネルを調達することで、液晶テレビへの参入も視野に入れ、ディスプレイ事業に取り組んできた中での撤退発表。
「2008年秋までは計画通りに進んでいた。しかし10月からの市場激変でテレビの価格下落が想定をはるかに上回った」(小谷氏)と市場環境の急激な悪化に、構造改革が及ばなかったと説明する。
また、「利益の根源であったカーエレクトロニクス事業が、今期始めて赤字となった。プラズマテレビの赤字を調整してきたカーエレクトロニクス事業も赤字となり、損益改善は望めないと考えた」(小谷氏)と断腸の思いをにじませる。
パネルからの一貫生産を手がけてきたパイオニアのプラズマテレビは、黒の表現力やコントラスト比など、その技術力が高く評価されていた。プラズマパネル製造技術に関する特許も持つ。
パイオニアのプラズマテレビは、現在販売している商品を持って終了し、予定していたパナソニックからのパネル供給は断念するとのこと。液晶テレビについても完全撤退を表明した。
プラズマテレビ事業に従事してきた従業員に対して質問が及ぶと「思いは十分にわかっているつもり。いろいろと検討を重ねてきたが、残念ながら続けることができなかった。申し訳ないと思っている」(小谷氏)とコメントした。
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