2009年3月期中間期に103億円の純損失を計上し、大きな話題となった朝日新聞社。その朝日新聞が10月から紙面で、新たな試みを始めている。月曜日朝刊の真ん中に月2回、通常の新聞紙とは異なる白い紙面の「GLOBE」というコーナーを設けたのだ。4ページであった紙面は1月から8ページに拡大。国際情勢の分析や世界で活躍する日本人のインタビューなどを掲載している。
「新聞は森羅万象をコンパクトにまとめて、タイムリーに届けるという、パッケージとして完成したメディアだ。しかし一方で、世の中が複雑になり、グローバリゼーションが進展したことで、新聞の中ではとらえきれないものが増えてきた。ほかのメディアではできないような深い情報を届ける媒体を、新聞と一緒に届けられないかと考えた」と、朝日新聞東京本社GLOBE編集長の木村伊量氏はGLOBEを創刊した理由を語る。
ターゲットは「グローバリゼーションが自分のビジネスや人生に直結するリーダー層」。これまで朝日新聞は官公庁や教育関係者に強い読者基盤を持っていたが、これを拡大する狙いだ。海外に駐在している特派員と、日本から海外取材している記者によるルポや分析記事を、「将来をまじめに考える人に届けたい」(木村氏)と話す。
「深い情報を知りたい、なかなか出てこない情報をもっと知りたいという、政策策定者やビジネスの第一線で働く人などに、新聞の良さを再発見して貰うための手がかりになればいい」(木村氏)
GLOBEにおける新たな試みは大きく3つ。1つは、紙面のデザインだ。新聞は通常文章を縦書きにするが、GLOBEではあえて横書きを選択。雑誌「Esquire(エスクァイア)」「和樂」などのデザインで知られる木村裕治氏がアートディレクションを担当し、フルカラーで写真を豊富に使っている。
「新聞だけれども新聞ではない、『新しさ』をアピールしたかった。横組みにすることであえて違和感を生み、それがインパクトになればと考えた」(木村氏)
2つめは、取材方法だ。「世界で起きていることの中で、通常の紙面では伝えきれていないけれども読者が知りたい切実なテーマとは何か」と全社にメールで投げかけ、取り上げるべきテーマを募集。また、そのテーマについて書きたい記者は、全国どこの支局にいても名乗りを上げることができるという。
「海外派遣特派員経験のある人を中心に10人ほどの編集チームがいるが、特集のテーマに沿ってアドホックにお願いし、朝日新聞全社で取り組んでいる。GLOBEという大きな場を朝日新聞の全記者に提供している。特に若い人たちに参加してもらいたいと思っており、地方支局の若い人も状況が許せばどんどん参加して欲しい」(木村氏)
3つめは、ウェブサイトとの連動だ。新聞社のサイトでは、過去記事を一定期間終了後に削除するケースが多いが、GLOBEのサイトでは過去掲載された記事をすべてアーカイブとして掲載している。
「朝日新聞は1995年にasahi.comを開設した。いつの間にか新聞がネットを嫌っていると言われるようになったが、ネットが登場したときにニューメディアだと言って真っ先に飛びついたのは新聞だった。ただ、これまでは即時性、速報性を重視し、情報のフローのためのメディアとして位置付けていた。ネットの特性から、記事を蓄積(ストック)することで、読者の人にいろいろ見てもらえる機会を提供できると考えた」(GLOBE編集チームでサイトディレクションを手がける田中郁也氏)
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