アドビCTOのリンチ氏「ユーザーはクラウドのリスクを十分に理解してない」

インタビュー:矢野りん、写真:佐々木大喜2009年02月02日 20時07分

 アドビ システムズは1月29日と30日の2日間、プライベートカンファレンス「Adobe MAX Japan 2009」を開催した。本誌はこのイベントに合わせて来日したAdobe SystemsのCTO(最高技術責任者)、Kevin Lynch氏とマンツーマンでインタビューする機会を得た。Lynch氏に同社の戦略やアプリケーションの将来像について話を聞いた。

Adobe MAX Japan 2009の基調講演で、Adobeはいわゆる「クラウド」上のサービス展開を強化する考えを打ち出しました。クラウドではインフラの整備が重要になりますが、Microsoftのデータセンターは100万台規模、Googleは300万台規模と、サーバ台数に関する予測の数字を耳にする機会があります。Adobeが抱えているクラウドの規模はどの程度なのですか?

 かなりあると思います(笑)ただ、我々はサーバの台数やインフラの規模を競うことに興味がありません

 むしろ、クライアント側のプロセスと、それに対するサーバ――この両者がどれだけ均等なバランスを保って機能するかに興味を持っています。他社が展開している規模の場合、コスト効果をあげるのが非常に難しい。さらに利益率を上げていくのも大変難しい事業になります。

 我々はどちらかというと「環境」作りを考えています。ユーザーがオンラインのアプリケーションを気持ちよく活用するための環境を、どう実現するかということです。

 ユーザーがAcrobat.com(※1)や、Photoshop.com(※2)を活用するために、クライアント側で処理できる範囲などを踏まえた上で、サーバの規模を最適化するという考え方です。

※1:PDFをオンラインで生成したり、ドキュメントを介してユーザーがミーティングするような機能を提供するウェブサービス

※2:Adobe Photoshopと同じ処理エンジンをオンラインで使えるウェブサービス。簡単な画像処理が可能

ネット上のアプリケーションがスムーズに動き、かつ、アプリケーションで作ったデータをサーバ側に蓄積できるという一連の作業を、正常に行える環境を目指しているということですね

Adobe SystemsのCTO、Kevin Lynch氏 Adobe SystemsのCTO、Kevin Lynch氏

 そうですね。もう少し進めていうならば、我々の技術の場合、ネット上のアプリケーションを活用しながらローカルストレージにデータを保存できるという点が大きな特徴なのです。これを可能にする技術が「Adobe AIR」で、我々はこの分野でさらなる革新を起こしたいと考えています。

 ローカルストレージの活用はシステムベンダーにとって、ストレージコストを圧縮できるという利点以上に、ユーザーのプライバシーの保護という観点からも大きなアドバンテージが見出せます。

 ユーザーは、どれくらいのレベルで自分のプライバシーを守りたいのか、自分で決めることができる。データに自分で保護のレベルを設定できるのです。

 クラウドコンピューティングにおけるリスクのひとつは、個人のデータが遠隔のサーバで管理されてしまうことです。これでは、自分自身で個人情報を管理することができません。

 さらに、あるクラウドサービスから別のクラウドサービスにデータを動かすという作業が、現時点ではとても難しいこともあります。いわば、雲の中の個々の「島」にデータがたまっている状態です。つまり、クラウド上に存在しているデータは、各々の環境の中でバルク状態にあるわけです。これが大きなリスクとなっています。

 長期的にこの状態が続く場合は、我々の技術でこの状況を改善することができると考えています。ただ、将来的には一貫しないデータという問題が、一貫性を持つようになるのかもしれません。

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