実際のデータを見てみよう。例として挙げるのは、全国に店舗を展開する企業のPCサイトとモバイルサイトだ。月ごとの大まかな変化を解析するだけでも、PCとモバイルでユーザー行動の違いを見て取ることが可能だ。図6はPC、図7はモバイルのデータで、縦軸の数値は双方同一の数値にしてある。
来訪者総数はどちらもさほど大きな差がない。一番大きな違いはページビュー数と滞在時間になる。 PCの方が情報量を多く掲載できるため、サイト内の回遊が自然と増加する傾向にある。反面、モバイルは必要な情報のみを短時間のアクセスで得る傾向がある。
全来訪者に占める新規来訪者の割合はPCにおいて非常に高い。モバイルでは逆に、再来訪率が非常に高くなる傾向にある。
そして、一番特徴的なのが真ん中のB月に起きている現象である。PCでの滞在時間が短くなった一方、モバイルでは再訪率が伸び、かつページビュー数と閲覧時間も他の月より多くなっている。
これはモバイルで店舗に誘導するためのクーポンを配布したためだ。クーポンページへの誘導はPCサイト、モバイルサイトの両方で実施した。新規来訪者はまずPCサイトで詳しい情報を入手し、自分の行動範囲の店舗情報を得た後、PCサイトからクーポンをプリントアウトするのではなく、目的の店舗へ移動するタイミングでモバイルサイトの該当店舗ページに移動し、クーポンページをお気に入り登録した上で店舗で利用している。こういった動向もアクセス解析データを時間毎に比較することで見えてくる。
もちろん月ごとの比較データだけで戦略を立てるわけではない。日ごとの傾向を比較すると、給料日後にアクセスが集中する傾向が見られる。また、曜日毎を比較したところ、週末に増加すると予測していたアクセスが、実は週の半ばに集中する傾向が見られた。なぜ週の半ばにアクセスがあるのかについては明確な理由が見えてこなかったのだが、ウェブに関わっていないメンバーと飲みに行った際にふとこの話題を振ると、週の半ばに配布されるフリーペーパーに広告を掲載していることが判明した。この広告の影響があった可能性がある。
さらに、時間毎の傾向を解析すると、6時台から8時台といった出勤時間に当たるとみられる時間帯にはモバイルで情報を収集し、9時台から10時台といった出勤後に当たるとみられる時間帯にはPCで情報を収集するユーザーの傾向が見られた。
行動傾向を閲覧ページから分析する限りでは、モバイルではトップページに掲載されている特価情報やキャンペーン情報が閲覧される傾向が高く、PCでは特価情報の詳細ページやキャンペーンの内容にあたるページが閲覧される傾向が強く出ていた。
「今日はお得な情報がないか」というのを出勤時間帯に収集し、興味のある情報や、タイトルを見つけた後は、そのままモバイルで詳細ページを閲覧するよりも、より情報量が多く、1ページで見やすいPC側に頼る傾向があると推測できる。
このようなアクセス解析情報と、リアルで配布する情報誌への広告掲載や、交通広告、CMなどをいつどこでどのタイミングで行ったのかを突き合わせれば、顧客の属性と行動傾向がより見えてくる。ただし念のために追記しておくと、このような行動傾向はモバイルサイトのコンセプトや、来訪者の傾向によって、閲覧時間帯をはじめかなり異なる点はご理解いただきたい。
実際のデータを見ていただくことで、モバイルサイト解析によって、PCサイトだけ見えてこないライフサイクルが見えることを感じていただけただろうか。読者の方々でアクセス解析データをお持ちの場合、上記のデータに類似していることもあるとは思うが、全く同じ傾向にはなっていないだろう。他社のデータとの比較に頼りすぎず、PCだけでは見えてこないモバイルサイトへの来訪者の行動傾向を把握することが、収益に繋がるイメージを持っていただければ嬉しい。
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