成井:Creative Commonsなどはそういったことに対する提案ですよね?
石井:硬直的な保護を柔軟にしようとする試みといえるでしょう。著作権法の特徴として創作した時点で著作権法の俎上に自動的に乗ってしまう。しかし、それを期待していない人も多い。つまり、現在の著作権法ではコンテンツの自由な使い方が阻害される。そこで、著作権法ではなく契約でコントロールしようとする考え方が生まれてきたといえます。
つまり民法の契約自由の原則でカバーしようという考え方です。でもそれを1人ずつ契約するのは大変なのでグループでやろうとする考え方が生まれてきたのだと思います。
成井:自分で保護のレベルを設定することができるというのはどこかDRMの考え方と似ています。商用はだめ、クレジット入れれば何してもいいとか、いろいろな設定が可能になるのですね。
石井:そうです。コンテンツを一律の著作権法で保護するのではなく、作者が自由にその保護のレベルを決めることができるという考え方です。たとえば、クレジットさえついていれば複製や頒布が自由にできたり、商用でなければ利用や配布が自由にできたり、または、改変も許諾することもできます。
成井:ニコニコ動画で有名なドワンゴが2008年8月に二コ二コモンズという仕組みを公開しました。これはCreative Commonsの日本版ということでしょうか?
石井:二コ二コモンズは面白いと思います。デジタルコンテンツを素材として遊べる環境を用意したという感じですね。ただ、Creative Commonsに比べて契約の面を意識的に弱めているのが気になります。
デジタルコンテンツというのはその性質上、二次利用だけでなく、三次利用、四次利用とどんどん広がっていく可能性があります。二次著作物にも著作権は発生してしまいます。二次利用、三次利用とされていくうちに、一つの作品に複数の人が権利を有するということがあり得るのです。
たとえば、それらのコンテンツが何らかの形で商用になった場合、曖昧な契約でその権利処理がちゃんとできるのか疑問です。もともとCreative Commonsのような考え方は、そういった場合のリーガルコストを下げることが目的なのですが、契約を曖昧にしておくとむしろリーガルコストが上がってしまう危険があります。
契約が曖昧だと、その解釈が争いになり、結局、その曖昧さを著作権法で埋め合わせるということにもなりかねないのです。
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