対談:デジタル著作権ってどうなってるの?(前編) - (page 4)

成井Creative Commonsなどはそういったことに対する提案ですよね?

石井:硬直的な保護を柔軟にしようとする試みといえるでしょう。著作権法の特徴として創作した時点で著作権法の俎上に自動的に乗ってしまう。しかし、それを期待していない人も多い。つまり、現在の著作権法ではコンテンツの自由な使い方が阻害される。そこで、著作権法ではなく契約でコントロールしようとする考え方が生まれてきたといえます。

 つまり民法の契約自由の原則でカバーしようという考え方です。でもそれを1人ずつ契約するのは大変なのでグループでやろうとする考え方が生まれてきたのだと思います。

成井:自分で保護のレベルを設定することができるというのはどこかDRMの考え方と似ています。商用はだめ、クレジット入れれば何してもいいとか、いろいろな設定が可能になるのですね。

石井:そうです。コンテンツを一律の著作権法で保護するのではなく、作者が自由にその保護のレベルを決めることができるという考え方です。たとえば、クレジットさえついていれば複製や頒布が自由にできたり、商用でなければ利用や配布が自由にできたり、または、改変も許諾することもできます。

成井:ニコニコ動画で有名なドワンゴが2008年8月に二コ二コモンズという仕組みを公開しました。これはCreative Commonsの日本版ということでしょうか?

石井:二コ二コモンズは面白いと思います。デジタルコンテンツを素材として遊べる環境を用意したという感じですね。ただ、Creative Commonsに比べて契約の面を意識的に弱めているのが気になります。

 デジタルコンテンツというのはその性質上、二次利用だけでなく、三次利用、四次利用とどんどん広がっていく可能性があります。二次著作物にも著作権は発生してしまいます。二次利用、三次利用とされていくうちに、一つの作品に複数の人が権利を有するということがあり得るのです。

 たとえば、それらのコンテンツが何らかの形で商用になった場合、曖昧な契約でその権利処理がちゃんとできるのか疑問です。もともとCreative Commonsのような考え方は、そういった場合のリーガルコストを下げることが目的なのですが、契約を曖昧にしておくとむしろリーガルコストが上がってしまう危険があります。

 契約が曖昧だと、その解釈が争いになり、結局、その曖昧さを著作権法で埋め合わせるということにもなりかねないのです。

略歴
成井秀樹
アスキーにてMS-DOSなどマイクロソフト製品の日本市場導入にかかわり、西社長(当時)やマイクロソフト社長ビル・ゲイツ(当時)から薫陶を受ける。1999年アイドック株式会社を創業、2005年PDFコンテンツの著作権保護ソリューション「KeyringPDF」を開始。2007年、国内初のSaaS型Flashコンテンツ保護ソリューション「KeyringFLASH」を開始した。デジタル著作権保護の第一人者。趣味はフライフィッシング、東京外国語大学卒、東京都出身。現在はアイドック株式会社 代表取締役を務める。

略歴
石井邦尚
パートナー弁護士。2004年8月にリーバマン法律事務所を開設。前所属事務所では、一般民事事件の他、企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産、倒産などを扱い、特にIT関連事業に関する法務に多く取り組む。2002年からアメリカへ留学し、会社法分野と知的財産権法分野を中心に学ぶ。帰国後に独立してリーバマン法律事務所を設立し、「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべく、日々取り組む。

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