楽天のさまざまな研究開発の成果を紹介するとともに、技術者のコミュニティに探求と論議の場を提供する「楽天テクノロジーカンファレンス2008」が11月29日、都内で開催された。同カンファレンスは、楽天の会社設立10周年を記念して、2007年から行われている。
楽天の取締役常務執行役員である杉原章郎氏は開催にあたり、「技術は楽天の競争力の源泉であり、技術者同士のつながりに組織として楽天も加わりたい。そのためにも、エンジニアの人的ネットワークの拡大や、活動の活性化に寄与していきたい。また、技術者のコミュニティ活動を支援、推進していく。昨年は、楽天がどれだけ技術開発に注力しているかをアピールしたが、今回はエンジニアやコミュニティに対する後方支援の要素を前面に据えた」と話した。
基調講演にはプログラミング言語「Ruby」の開発者として知られる楽天技術研究所フェローで、ネットワーク応用通信研究所フェローのまつもとゆきひろ氏。「グローバル&オープン時代のエンジニアライフ」との表題で講演した。
まつもと氏は、この10数年あまりでインターネットの進化、接続環境のブロードバンド化と低廉化により、時間的距離とともに国境の壁さえも低くなってきている現状を踏まえ、「オープン化が進み、誰もが容易に情報へアクセスできるようになった。情報隠ぺいは意味がなくなり、距離や時間に守られてきた小さな世界、いわば箱庭は失われようとしている。オープンソースソフトの台頭で、一部の巨大ベンダーを除けばパッケージソフトで利益を得ることが困難になっており、エンジニアには安住の地がなくなってきている」と指摘した。
「箱庭の最後の砦」(まつもと氏)として残るのは「言語と文化」(同)であるという。このような状況のなか、エンジニアはどうすべきなのか。
「情報の格差というものがある。それは解消すべきともいわれるが、モノが高いところにあれば、位置エネルギーが発生し、電気を起こしたりすることができる。情報の場合も、上の方やまんなか辺りにいれば、位置の差でエネルギーを取り出せる」(同)
その実例は「タイムマシンビジネス」だ。IT産業などは技術革新や利用あるいは活用の点で米国が先行し、日本は遅れをとってきた。しかし、米国の先進的なビジネスやノウハウを、言語や文化の壁を越えて「輸入」してきた人々が、いわば時の流れが遅れている日本で成功を収めた。
「何もないところから始めなくても、ちょっとアンテナが高ければ仕事になる。そんなやり方もある」(同)
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