まずは、気になる音質のチェックだ。前モデルから引き続きボーズサウンドともいえる豊かな低音は健在だろうか、さっそく試聴してみよう。
最初は、女性ボーカルから。女性シンガーソングライター、Melody Gardot(メロディ・ガルドー)の『夜と朝の間で』から「サム・レッスンズ」を聴いた。ノラ・ジョーンズを少し掠れさせたようなセクシーさと可愛らしさが同居した素晴らしい雰囲気を持つ声が魅力だが、どこまで引き出せるか。
再生すると向かって左方向から、ギターのアルペジオが聴こえてくる。中低音が伸びた心地よい音だ。ガルドーの歌が始まると、ボーカルがセンター位置に浮き上がってくる。ささやくように歌うところと、伸びやかに歌う部分のどちらも魅力的に聴かせてくれる。リップノイズもリアルに細やかに拾ってくるなど、情報量も豊富だ。このサイズで、これだけ立体的な音が聴けるとは驚きだ。
あまりにボーカルが気持ちよかったので、もう1つボーカルものを。今度は男性コーラスグループのTAKE 6を聴く。曲は最新アルバム『Standard』から「What's Going On」。再生するなり、スナップ音が左右にパッと広がる。ついで、メインボーカルがキチンと真ん中に屹立しながら、他の5人のコーラスが前後左右に現れる。それぞれの声質も描きわけ、目の前でTAKE 6のメンバーが歌っているかのようにリアルな音場ができあがる。通常、左右の分離感が出ることはあるが、このサイズで前後の関係まで描くとは思わなかった。
続いて、軽めのロック&ポップスを。プロサーファーからミュージシャンに転身したサーフミュージックの旗手DONAVON FRANKENREITER(ドノヴァン・フランケンレイター)の3rdアルバム『パス・イット・アラウンド』から「ライフ、ラヴ&ラフター」を聴く。左からアコースティックギターのストロークで始まり、ドラムスが参加、そこにベースが入ってくるというイントロ。各々が確実に聴けるかを確認した。再生すると同時にアコースティックギターのストロークが左に現れる。そこに中央のドラムが加わる。芯のあるしまったバスドラムにベースが絡む。低域も広がりすぎず締まっているのもいい。すべての楽器が渾然一体となることなく、きちんと分離してくれる。
最後に重厚感のある低域を確認するために交響曲を聴くことにした。選んだのは名盤として有名なクライバー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の『交響曲第5番<運命>・第7番』。誰もが知っている運命の主題の迫力は再現されるのかを試した。さすがに厳しいだろうとちょっと意地悪のつもりでかけたのが、これが意外にも頑張るのだ。運命の主題でのコントラバスの胴鳴りも聴こえてくる。それぞれのパートがつぶれることなく存在感をもって押し出してくる。まるでコンサートホールで、オーケストラを聴いているような気持ちになる。スピーカーからの音離れがよく、交響曲でも奥行きのある立体的な音を再現してくれるのだ。
ひととおり聴いてみたところ、全般的にスピーカーからの音離れのよさには、特筆すべき能力を感じる。ラジカセよりも小さなコンパクトスピーカーで、ここまでの音場を再現できるのは驚嘆すべき再現力だ。もともとSoundDockシリーズは、入力した音声信号をデジタル変換し、使用しているスピーカーの特性をiPodに合うようチューニングしているというが、この新製品でもサイズを超えた音楽を再現してくれる。低域もダラダラとすることなく締まっており、音像をとても明確に描いてくれる。特にボーカルものは、ボーカルが正面にキレイに浮きあがってくるので、非常に心地よい。音楽の美味しいエッセンスを凝縮して出してくれるのは、ボーズならではのものだろう。
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