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出生率アップにまでつながったMSのデジタルデバイド解消プログラム

藤本京子(編集部)2008年10月03日 19時13分
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 マイクロソフトが取り組む「UPプログラム」とは、デジタルデバイドを解消し、現在ITの恩恵を享受できていない全世界の約50億人の人々にITの便益を提供しようというものだ。UPプログラムのUPは、「Unlimited Potential」(無限の可能性)の略。ITで無限の可能性を引き出そうという思いが込められている。

 同プログラムでは、マイクロソフトがソフトウェアや資金的な支援を提供し、各地方自治体が独自のプログラムを展開するようになっている。このプログラムにおいて、マイクロソフトと最初に連携したのは大分県だ。2003年11月から2008年6月の約5年に渡り、大分県で同プログラムのコーディネーターを務めた財団法人ハイパーネットワーク社会研究所は、支援グループやNPO法人と協力し、高齢者向けや障害者向け、子育て主婦向け、そして情報セキュリティ対策などのプログラムを実施してきた。

 中でも、子育て主婦を対象としたプログラムが非常にユニークな取り組みを行っている。大分県速見郡日出町のNPO法人パワーウェーブ日出が中心となって展開した「日出町・子育て支援UPプログラム」では、託児所つきのパソコン初心者講座を提供しているが、その託児所の運営方法がユニークなのだ。

小野氏 パワーウェーブ日出 理事長 小野町子氏

 「当初託児所つきの講座を提供したいと考え、見積もりを取ると、とても子育て中のママに負担してもらえないような額だった」と話すのは、パワーウェーブ日出の理事長 小野町子氏だ。そこで、子育てママに負担にならない程度の安価なパソコン講座と託児所を提供するために誕生したのが、「見合い託児」というシステムだ。

 見合い託児とは、子連れで講座を受けに来たママが、自分が講座を受けていない時間帯に託児所のサポートに入るというシステム。専門機関より安価で託児所が利用できるほか、託児サポートに入るとママにアルバイト料も入る。無料の託児サポート研修を受ければ、誰でも託児サポートスタッフになることができる。

 託児料金とアルバイト料のプラスマイナスはほとんどゼロに近いが、それでもお金のやりとりを発生させるのは「お金を回して地域経済の活性化につなげたいという理由はもちろんのこと、給料を受け取ることで専業主婦だったママが少しでも社会参加でき、家計にも貢献できるという思いを持ってもらいたいため」(小野氏)という。

 また、初心者講座の卒業生は、講師養成講座を受けることで講師となることも可能だ。受講者のほとんどは、「受講前にはマウスの使い方も知らなかった」という人もいるような初心者のため、講師のスキルとして求められるのはハイレベルなパソコンスキルよりも、初心者の立場に立って丁寧に教えられること。講師は託児所も無料で利用できるため、「わが家は双子がいて、2人の小さい子供を連れては外出さえできなかった」という若いママはもちろん、いったん子育てを終えて社会復帰したいと考えるママにも人気の職業となっている。

 日本全体で出生率の低下が叫ばれる中、こうした子育てママを支援する取り組みが地域社会にも良い影響を与えているのか、パワーウェーブ日出が活動を開始した2004年以降、日出町では出生数も増加しているのだという。この講座を実施するために、場所と光回線網を準備した日出町 町長の工藤義見氏も「これから世界全体が情報化社会へと進む中、いい町を作るためにはIT化に力を入れることは重要だ」と述べ、今後もこの講座をサポートする姿勢を見せている。

 副産物として出生率の向上にもつながっているUPプログラムは、まさに無限の可能性を秘めていると言えるのかもしれない。

託児所 託児所で楽しそうに遊ぶ子供たち

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