「この曲が前の曲よりも少し上位にランクインして、人々にLHCのことを知ってもらえればと思っていた。けれども、こんなにヒットするとはまったく予想していなかった」(McAlpineさん)
McAlpineさんの前の上司で、米国物理学会の広報責任者であるJames Riordon氏は、この曲は「LHCに関する最も優れたPR活動の1つ」だと述べた。McAlpineさんにニューロチップのラップをMP3や動画にすることを勧めたRiordon氏は、McAlpineさんの歌は下手で、「自分のばかっぷりをさらけ出している」かのようだが、ラップや文章は魅力的で、ためになり、正確だと付け加えた。
CERNに勤務し、ロンドンとジュネーブを行き来しているMcAlpineさんが「Large Hadron Rap」をYouTubeに投稿したのは7月末のことだった。しかし、LHCのプロジェクト始動日である9月10日の1週間ほど前まで、視聴率は伸び悩んでいた(LHCはその後、ヘリウム漏れによる機能不全のため、2009年春まで稼動を停止している)。McAlpineさんによれば、YouTubeが「おすすめ動画」としてこのラップをホームページに掲載し、その後、CNNを始めとする多くのメディアが注目し始めたという。
そして、人々は明らかにこれだけでは満足しなかった。音楽を正式に学んだのは高校のバンドくらいだというMcAlpineさんは、「わたしが『Large Hadron Rap』を投稿したとき、ニューロチップラップ(以下の埋め込み動画)の視聴者は600人だった。ところが、最近チェックしたときは、(ニューロチップラップの)再生回数は1万を超えていた」と述べた。
McAlpineさんは、CERN外部の人間だが才能のあるWill Barrasさんにビートを担当してもらったため、これまでのどの作品よりも「Large Hadron Rap」が気に入っているという。なお、BarrasさんはCERNで広報部門のインターンをしているある人物の兄弟だ。McAlpineさんの推定では、曲を書いて動画を制作するのに、全部で30〜40時間ほどかかった。もちろん、これにはLHC内部でのビデオ撮影の許可を得るのにかかった時間は含まれていない。McAlpineさんの要請に対して、広報部門の責任者は、「あなたがラッパーをアトラス(検出器)内部に連れ込もうとしていると聞いた」と書いた。McAlpineさんは、責任者に見てもらうために歌詞を送り、「ラッパー」はインターンにすぎず、「きわどいことは何もない」と説明した。
ラップビデオへの反応は、物理学者を含め、おおむね好評だ。しかし、「素粒子物理学はラップで取り上げるにはまじめすぎると考えている」人も少数だがいる、とMcAlpineさんは述べた。さらに、YouTubeのコメントの多くは、ブラックホールについて心配する人たちからのものだったという。
しかし、最高の反応は、ラップビデオを授業で見せたいという教師たちからの要望だったと、McAlpineさんは述べた。
「これは最高の敬意だと思う」とMcAlpineさんは述べ、動画をYouTube、TeacherTubeの両方でダウンロードできるようにしたと付け加えた。
McAlpineさんの次回作はLHCの実験結果に関するラップで、最初のLHCラップで約束したとおり、「心を揺さぶる」ものになるだろう。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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