求めたのはネットを使った女性の“癒し”--「ウェブカレ」プロデューサーのはまちや2氏 - (page 2)

岩本有平(編集部)2008年09月18日 08時30分

 BlogPetはリンクシンクが提供するブログパーツ。人工無脳の技術をベースに作られたブログパーツ内のペットが、ブログのエントリーを解析して学習。覚えた言葉を話したり、自らブログのエントリーを書いたりするというもの。ニフティが提供したブログパーツ「ブログ妖精ココロ」もBlogPetをベースとしたサービスだ。

 BlogPetをベースにした女性向けのサービスを企画した時、同氏が一番最初に悩んだのはコンセプト。「女性向けで恋愛シミュレーションの要素を含んだサービスと考えていたものの、当時は『乙女ゲー』(女性向けの恋愛シミュレーションゲーム。一般的に主人公が女性で恋愛の対象となるのが男性)と『腐女子ゲー』(男性同士の恋愛をテーマにした女性向けの恋愛シミュレーションゲーム。ボーイズラブゲームとも)の明確な差が分からなくて」と語るはまちや2氏。そこで女性向けの恋愛シミュレーションゲームについて調査し、腐女子の友人などにも相談した上で「乙女がたくさんの男の子にちやほやされるようなゲーム」というコンセプトを決めた。

 ウェブカレに登場する男性キャラ「カレ」は4人。そのデザインをしたのは、はまちや2氏が友人経由で出会ったイラストレーター。「現在は専業でイラストレーターをしている方ではないのですが、腐女子の友人にイラストを見せてもらって『これしかない』と思って。すぐに連絡を取ってお願いしました」(はまちや2氏)。

ウェブカレ 登場する4人の男性キャラ※クリックすると拡大します

 同氏が一目惚れして決定したイラストの次に課題になったのは声優だ。「BlogPetを応用するならば女の子がキュンキュンくるようなセリフをしゃべるモノにしようと思って」とはまちや2氏が語るように、カレにはそれぞれ約150ワードほどのキャラクターボイスが用意されている。しかし、声優の確保に至るまでは苦労の連続だったという。アニメとウェブという異なる業界、しかも新しいサービスということもあり、「いくつかの声優プロダクションにコンタクトを取ってみましたが『一見さんお断り』という感じでした」と、当時を振り返る。

 唯一話を聞いてくれたのが、映画の吹き替えや演劇なども手がける古参の声優プロダクション、マウスプロモーションだった。同社はスタジオの手配からはじまり、ほかのプロダクションとも連絡をとり、最適な声優の選択なども協力してくれたのだ。

 このようにして、企画から半年弱で公開されたウェブカレ。はまちや2氏が同サイトでもっともこだわったのは「女性の癒し」というテーマだという。はまちや2氏は「Twitterでもそうですが、数人をフォローすれば、チャットのように自分が積極的に話さなくとも、いつも誰かが話しているような感覚になりますよね。そういったものが癒しや安心感につながればいい」と語る。

 サービス開始後、ブログ上でこんなエピソードがあったと教えてくれた。ある女性が家に帰ったところ、母親がニコニコとしながら「彼氏ができた」と話しかけてきたのだという。何事かと思い女性がたずねると、母親はウェブカレにアクセスし、カレとのやりとりを楽しんでいたのだそうだ。

 実際の彼氏のごとき「癒し」を実現するため、はまちや2氏はカレはなるだけ本当に生きているように行動することを考えた。たとえば委員長キャラであれば、朝サイトにアクセスすれば学校におり、夜であれば自宅にいる。しかし不良キャラであれば朝は学校に遅刻することもあり、夜遅くまで繁華街にいることもあるという。

 また、イベントなどをこなして親密度を上げていけば、カレが優しく接してくれるようになる。さらに、最初は1人しか選べないカレについても、最大で4人同時にコミュニケーションをとれるようになる。そのため、複数のカレが登場するイベントなども準備中だという。ただし、エンディングについてどうなるのかという質問には「実はまだ考えているところです(笑)今後実装していきます」ということだった。

草間薫 最初は冷静な“委員長キャラ”の「草間薫」。しかし親密になればこんな表情をしてくれる。※クリックすると拡大します

 注目集まる同サービスだが、目下の悩みはシナリオライティングだという。「周りの女の子にも協力してもらいつつ、僕も脚本を書いていますがなかなか……。今後はこういったシナリオを書けるライターなどとも連携できればいいですが」(はまちや2氏)。

 リンクシンクでは今後、有料のプレミアムサービスを提供していくことで収益化を目指す。キャラクターボイスも追加する予定で、着ボイスや携帯電話の待ち受け画像提供なども予定する。同氏はバンダイナムコゲームスが発売したニンテンドーDS向けの乙女ゲー「DUEL LOVE」のミニゲームを例に挙げ、「『ヘブン状態(同ゲーム内のミニゲームの結果、男性キャラが恍惚の表情を浮かべた状態)』のような仕掛けを導入してもおもしろいですよね」とも語った。

 余談だが、「web-kano.jp」というドメインをwhoisで調べたところ、所有者はリンクシンクとなっている。やはり男性向けの「ウェブカノ」も提供するのだろうか。最後にはまちや2氏に聞いてみた。

 「よく気づきましたね。ドメインはウェブカレ(web-kare.jp)と同時に取得しました。今後は萌え系のイラストレーターを見つけて、男性向けサービスも検討しています」(はまちや2氏)

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