プレスリリースが起こす広報の「スパイラル効果」

藤原直美(未来予想)2008年05月16日 14時56分

 前回は、ベンチャー企業において、広報活動の陣頭指揮は社長がとるべきであると提案してみました。今回は広報のリリース案件(本文では広報ネタとしています)の具体的な事例から、広報活動が引き起こすスパイラル効果についてまとめてみたいと思います。

広報ネタはどこにあるのか

 現在さまざまな企業が自社サイトやプレスリリースサービスを通じてプレスリリースを発表しています。そういった際の「広報ネタ」にははどのようなものがあるのでしょうか? 以下に代表的なものをまとめてみました。

 一般的なもの

  • 新商品や新サービスの発表
  • 組織変更や経営陣の人事異動の発表
  • 業務提携・資本提携の発表
  • 第三者機関による認証やライセンス取得の発表
  • 業績発表や業績予想の修正の発表
  • 大規模な投資の発表

 二次的なもの

  • 商品のマイナーバージョンアップや機能追加の発表
  • コーポレートサイトのリニューアル
  • 既存事業の積極拡大方針の発表
  • 事業方針の新転換の発表
  • 本店変更や支店および拠点拡張の発表
  •  特徴がでており目をひくようなもの

  • コーポレートロゴやコーポレートカラーの変更についての発表
  • 人事採用や社内の雇用制度の変更についての発表
  • 特定商品が大企業に採用されたなどの個別案件の実績発表
  •  上記は簡単にまとめたつもりですが、一般的に考えられる商品やサービスの発表に固執する必要はまったくなく、自社の経営指針にとって重要な変革をもたらす内容であると経営者がすれば、それを広報ネタとして使うべきだと思います。

     広報ネタというのはいくらでも生み出せます。逆に、ネタがないというのはなんら会社に変化をもたらせていないことと同じだと言えるでしょう。どんな会社でも成長意欲のある会社であるならば、最低でも年間で3〜4本は広報ネタがあるはずですし、機動的に動くことのできるベンチャー企業であればなおさらに広報ネタが日々生み出されているのではないでしょうか。

    広報の切り口を変えてみる

     同じ内容であっても、切り口を変えるだけでも十分広報ネタとしては使えることもあります。サイトをオープンさせたあと、会員数が10万、100万といったきりのいい数字を達成した際のリリースに始まり、ユーザーの滞在時間が長ければ、それをアピールするプレスリリースをすることも可能です。また、同様に1ユーザーあたりのPV数なども同様でしょう。

     企業にとって、あるサービスが経営指標となるのであれば、そのサービスの成長レベルをリリースしていくのもよいかと思います。同内容のサービスや商品に対して切り口を変えることでもPR広報としては威力を発揮することがあります。ただし、乱発すればよいということではなく、あくまで同業他社や一般的な水準より特長があることが大前提です

    メディア掲載がメディア掲載を呼び込む広報の「スパイラル効果」

     無事にプレスリリースを配信し、雑誌や新聞、ニュースサイトなどに記事が掲載されたことを確認したとします。すると、不思議なことに気付くのではないでしょうか。1つでも媒体に掲載された途端、ほかの媒体にも次々に記事が掲載されだす、ということが起こることが少なくないのです。

     媒体側の目線で考えれば、その媒体に最適な分野での重要な発表や注目を集める発表などが記事化の対象となるはずです。

     それならば、ほかの媒体に掲載された記事であったとしても、ネタ次第ではどんどん自社の媒体にも取り入れようとすることはあります。媒体やニュースにもよりますが、大手の媒体に掲載されたりすると、それと連携するようにあっという間に10社以上の媒体で掲載されていることすらあります

     ネット媒体ではその動きが2〜3日で顕著に表れます。企業にとっては多く広報されることにこしたことはありませんので、このようになってしまえば、もはやあとはチャンスを逃さないようにするだけです。おそらくさまざまなオファーやアプローチを受けることになっているでしょう

    次の広報ネタのストーリー性をだす

     一度大きく記事になると、さまざまな媒体の記者からアプローチがはいり、取材依頼などがくるのではないでしょうか。あとは、その取材を丁寧に受け入れて対応しましょう。

     記者との連携を常にとるようにして、次回の広報ネタもあることや、その方向性を記者に伝えておくのがよいでしょう。方向性が明確でないまま、多方向への展開を示唆すると、「なんでもやる会社」「散漫な経営」と思われかねません。

     ですので、広報ネタは常に経営理念や戦略に基づいてストーリー化されていることが重要です。記者の方とは長いお付き合いを前提とするならば、自社が常に成長をとげ、その成長も一貫したポリシーをもっているということを見せることで、次の広報ネタの取材などもお願しやすくしておくというのも渉外役を務める広報としては大切かと思います。

     これらを数回繰り返せば、ものすごく前向きなスパイラルになっていきます。リリースとリリースの間にストーリー性をもたせることで、ビジネスパートナーになりえる企業から、思いもよらない提案もあるかもしれません。

    未来予想パートナー
    藤原直美(ふじわら・なおみ)

    東京都出身。衆議院議員秘書の経歴をもち、その後ベンチャー企業管理部門機能の経験を経て、現在ベンチャー企業向けの経営企画・管理部門コンサルティングならびに実務支援の専門家として活動をしている。 未来予想グループの主なベンチャー支援向けサービスは「ベンチャー経営支援総合ポータル MiraiZ」「EIP型マネジメントASP Mirai'z V1」「プレスリリース配信代行 @press」「インキュベーションオフィス CROSS.COOP

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