第1回目となる前回のコラムでは「広報」と「広告」の違いが何であるかというところを主軸に話をしましたが、今回はもう少しビジネス視点で踏み込んだお話をしたいと思います。
ベンチャー企業においてブレイクスルーがおこる局面は、「社会的認知」という、大きな意味での広報により実現することが多いのです。
ベンチャー企業はその成長過程において、常に新しいサービス・商品や発想を世間に生み出していくことになります。もちろんみなさんの企業でも、サービス・商品を世に出し、営業活動をしているかと思います。
では、みなさんの提供するサービス・商品が非常によいものであり、顧客メリットがあるものであったとしましょう。そして、営業活動をすれば確実に受注がとれるほどに高いニーズのあるものであったとします。
それほどすばらしいものであれば、みなさんのサービス・商品が飛ぶように売れるかというと世の中そうそう甘くはありません。それはなぜか? 一言で片付ければ、みなさんの会社の知名度が低いから、とも言えるのではないでしょうか。よいサービス・商品であるならば、知名度が上がればさらなる引きあいが舞い込むことでしょう。
知名度というのは一夜にして高まることはありません、と言いたいところですが、実は一夜にして知名度が急上昇することのほうが多いと言っても過言ではありません。芸能人でもそうですし、商品やサービスでもそうです。もちろん、積み重ねていくことで知名度が上がることはありますが、その一方で、一気にスターダムに駆け上るものも少なくありません。
では、そのように知名度を上げるためにはどうすればよいかというと、常に広報を積み重ねながら、商品力によって抑揚をつけながら活動をするということに他なりません。定期的な広報活動を実施し、社会に対して提示・提案をしていく。
このような地道な活動は、その成長障壁を少しずつ壊す要素になっていくはずです。ブレイクスルーするタイミングでは、この成長障壁が限りなく薄くなっていることでしょう。広報活動は、この成長障壁という壁を少しでも薄くする活動であるのではないかと思います。
前述したように、企業の成長障壁をとりのぞきブレイクスルーの可能性をより高くするということになると、もはや広報担当者に任せるレベルではありません。よくある失敗事例ですが、広報の重要性を認識したもののやり方がわからないので新たに雇った広報担当者に業務を丸投げした結果、何も結果がでないということがあります。
なぜでしょうか?…とりわけベンチャー企業では、自身が掲げる戦略や技術的な強みといったものを一番理解しているのは社長です、つまり広報は社長の仕事だとも言えるからです。社長の仕事をまだ企業の状況を把握していない中途採用の担当者に丸投げしているのですから結果がでるわけがありません。
また、広報活動には思わぬ効果を得ることがあります。おそらく、広報活動をする際には、新しい技術や新しいサービス、商品などをリリースするときに多く使うのではないでしょうか。つまり、自社の商品を多く広めたい、認知したい、伝えたい、ということが念頭にあるはずです。その商品が多く認知され、商品の引き合いが多くなり……というのが一般的な効果といえるでしょうが、思わぬところで以下のような効果がでることがあります。
よく経営の基本資源を「ヒト・モノ・カネ」と言いますが、受注(モノ)だけでなく、人材募集の数(ヒト)、投資の引き合い(カネ)も副次的についてくるということなのでしょう。これも広報活動により知名度があがり、信用力が増えたということです。ますます、広報が経営者の仕事であるという意味が見えてきますね。
繰り返しになりますが、ベンチャー企業にとって、成長障壁を取り除いていく仕事は、経営者の仕事です。少なくともその陣頭指揮は社長はじめとした経営陣で進めるべき事項だということをこの場でご提案したいと思います。
次回は、広報活動を積極的に実施した場合に起こる成功のスパイラルについてご紹介したいと思います。
東京都出身。衆議院議員秘書の経歴をもち、その後ベンチャー企業管理部門機能の経験を経て、現在ベンチャー企業向けの経営企画・管理部門コンサルティングならびに実務支援の専門家として活動をしている。 未来予想グループの主なベンチャー支援向けサービスは「ベンチャー経営支援総合ポータル MiraiZ」「EIP型マネジメントASP Mirai'z V1」「プレスリリース配信代行 @press」「インキュベーションオフィス CROSS.COOP」
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