GoogleとMicrosoftが、患者の個人的な管理下にある医療記録(Personally Contorolled Health Record: PCHR)のデータベースを管理する役割を担うようになるにつれ、医療研究者らの羨望の的になるかもしれない。
しかし、医学雑誌New England Journal of Medicineの記事によると、消費者が自分の医療記録を自ら管理する仕組みに向けた動きや、彼らをその仕組みに導くための手段にはいくつかの問題があるという。
PCHRの下では、患者はポータルを立ち上げ、そこで、医者、医療サービスプロバイダー、研究者、家族らが、その患者に関する情報を提供、共有することを許可する。記録や情報は、患者のPCHRに保存され、そのPCHRをGoogle HealthやMicrosoft HealthVaultが管理する。
現在、MicrosoftはNew York Presbyterian Hospitalと、またGoogleはCleveland Clinicとそれぞれ提携しており、それらの医療機関が患者に医療記録の電子コピーを提供している。
患者が許可すれば、企業、政府機関、医療関連事業者などは、PCHRプラットフォームに接続可能なアプリケーションの構築が可能だ。
しかし、その記事の執筆者であるKenneth Mandl博士とIsaac Kohane博士は、PCHRサービスプロバイダーに関する重大な疑問をいくつか提起している。例えば、サービスプロバイダーは研究をするのか、また、彼らは収集したユーザーに関するデータの二次使用が可能なのかなどだ。また、無論、プライバシー問題についても触れられている(PDFファイル)。PCHRサービスプロバイダーには、保健医療業界と同じ規制は適用されない。保健医療業界では、患者情報はその患者が医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(Health Insurance Portability and Accountability Act:HIPAA)に基づいて指名した人や企業にしか提供できないことになっている。
またMandl博士らは記事の中で、GoogleやMicrosoftが管理する患者情報のデータベースは、いずれ他の著名な医療研究プロがラムのデータベースよりも大規模かつ、最新の情報を確保したデータベースに成長する可能性があると指摘している。その結果、研究者らは、研究を行う際、多くの研究データのソースに頼るよりも、MicrosoftやGoogleと組んだ方が簡単で安上がりだと考える可能性もある。
PCHRを利用する際の課題としては、一部の研究所では患者への医療記録の開示が制限されていること、相当な数の医療記録が依然として紙ベースであること、さらに、現在米国には全国共通の患者識別システムが存在しないこと、などが挙げられる。
「たしかに、これらの課題はあるが、多くのPCHRの利用者は間もなく、貴重な情報資源を管理することになる。その資源とは、すなわち、すべての医療機関に保存されている彼らの医療情報が統合されたコピーだ」と研究者らは指摘する。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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