前々回、前回と企業の人材育成の勘所は下の3点であることを順に解説いたしました。
(1)会社の考え方に共感してもらえる人材を育成
(2)熱意(やる気)を持った人材を育成
(3)能力の高い人材を育成
さて、今回は(3)の「能力の高い人材を育成」について、能力開発の原則をご紹介していきましょう。各論については、次回以降にご紹介いたします。
行動に移すためにまず考えるべきことは、「どのような能力が必要か」ということです。
人の話を聴くのがうまい人、話すことに長けている人、細かい作業が得意な人もいれば、交渉上手な人もいます。デザインセンスに優れた人、計算が得意な人――など人の能力はさまざまです。
ただし、「会社として育成したい人材」ということであれば、結論は非常に単純です。すなわち、連載の初回で述べたように「会社の成果に貢献するための能力」と考えてよいでしょう。
さて、それを踏まえると、能力開発の具体的な手順は次のようになります。
(a)会社の成果を明確に記述する
(b)会社が必要とする人材像を明らかにする
(c)個人の強みに集中して能力開発を行う
(d)結果を個人へフィードバックする
それでは順を追って上から見ていきましょう。
能力開発は「会社の成果」を出来るだけ明確に記述し、社員にそれを求めることから始めます。「社員のやりたいこと」から始めてはいけません。
成果を十分に伝えないまま、「とりあえず研修に行ってこい」と社員を外部へ出す行為が頻繁に見受けられますが、多くの場合、目的のない行動は時間の浪費となります。
一般的には、「会社・組織の成果」が明確に記述された書類は「経営計画書」と呼ばれることが多いですが、能力開発に役立てるためには売り上げなどの数字の成果だけではなく、事業の内容や想定する顧客像まで具体的に記述する必要があります。
さらに、経営計画も「中長期計画」「年度計画」の2種類を用意することを推奨いたします。会社が求める人材は時々刻々と変化し、また能力開発には年単位で時間がかかるため、長期的視点と短期的視点の両方から人材育成を考える必要があるからです。
会社の目指す成果が明らかなったところで、次に取り掛かるのは「計画を達成するために会社が必要とするのはどのような能力を持った人材か」を考える作業です。そのために、「会社が必要とする人材像」を描いていきます。
下の図を見てください。こちらは一つの例ですが、前回までの連載で解説した「考え方」「熱意」を基礎とした人材像の事例です。この図には基本的な考え方と熱意のある方に対して能力アップを実行し、徐々に高度な能力を獲得してもらうための体系が設定されています。
この事例は業務アプリケーション開発を行う会社のものですが、「システムの設計〜開発能力」「コンサルティング能力」「プロジェクト管理能力」と、3段階に能力を設定しています。
さらに「システムの設計〜開発能力」は2段階に分かれており、最も基本的な能力として、「聴く」「考える」「書く」「話す」「時間の使い方」を設定し、業務を遂行する能力として「業務知識」「業界知識」「技術力」を挙げています。
ここまで至ると、皆様方の頭の中に次の疑問が浮かんでくるでしょう。「上にあるとおりに経営計画はある、人材像も決定した、教育もしっかりとしている。しかし、うまく人が育ってくれない・・・なぜなのだろうか。」
そこで、(c)を見ていただきたいと思います。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
パナソニックのBioSHADOWが誘う
心地良い室内空間のつくりかた