“生の喜び”奏で続け辿り着いた、「輝く星」という名のメロディ(最終回:宮澤弦) - (page 2)

「情熱をぶつけたいという思い」

--中学・高校の頃の夢は何だったのでしょうか?

宮澤氏 「父は型破りだけど、いつも人生の本質を語ってくれました。それは自分が楽しめることを全力でやり、天職だと思って死ぬまで楽しみ続ける――ということ。社会的に役立つことであれば、やっている本人が何より楽しいと思うことを全力でやるか否かが重要だと言われ続けました」

 ホームステイから戻ってきてからは、貪るようにシリコンバレーの本を読む時期がありました。IT業界の起業家の生き方の本などを読むうちに、「音楽家の生き方」と「新たなサービスを世に出し、全力で楽しんで仕事をするという起業家の生き方」に相通じるものがあり、「起業家人生」というものに非常に興味を持ち始めました。

--その後、大学は農学部に進まれます。これはどのような理由から?

 東京大学の理系の一類・二類というのは、入学が決定してから何をやるかを決めるんですよ。2000年頃はバイオが世の中の注目を集めていましたし、生物に関する興味も個人的に高まっていたので、理科二類(生物専攻)に入りました。

--大学に入って2年。勉強の傍らで起業を思い立たれるのですが、それまでの流れを教えてください。

 僕が札幌から東京に出てきた2000年の春の段階で、既にITバブルは崩壊していました。当時の論調としてはもう「ITは終わった」感でいっぱいでしたね。

 しかし、僕にはITだと若くてもやりたいことがすぐに手がけられることや、まだまだ成長する可能性が感じられて、非常に興味があったんです。小さい頃から接していましたし。ですから、入学後は、いつもビジネスのアイディアをノートに書き残し、時間を見つけては、経済学部やMOT(技術経営)の授業をもぐって受けて、事業に役立つであろう知識を吸収していました。

--それが、大学2年の終わりに御友人と事業を立ち上げるということに繋がるんですね。立ち上げ当初はどのようなことをやられたのですか?

 まず、オンラインでのパブリッシング(出版)をやり始めました。とにかく、友人と僕はやりたいことをやる環境・情熱をぶつける先が欲しかったので机を2つだけ借りて始めました。

 

--理系というと実験や研修等で大変というイメージがありますが?

 実験も結構ありましたね。時代が時代ですから、携帯やメールを駆使してやり取りできるので、何とか両立できましたが、そういったツールがなかったら両立は困難だったと思います。あと、結構睡眠時間を削っていましたので、よく扁桃腺が腫れて熱を出してましたね。

--2002年というと、IT関連の色々なサービスやソフトウェアがかなり出そろってきた中、宮澤さん達の思いは、そのIT業界に一歩踏み出すという思いだったのでしょうか?

 色々な企業がサービスを提供し、既に株式上場をしてさらなる成長をしているという中、それらの会社は僕達にとっては別世界の方々でしね。実際にお会いしたこともなかったですので、あの人たちは、遠いインターネットの人達(笑)。僕らは僕らでただ「今この事業をやらないとヤバい」というとりつかれたような思いだけでしたね。

「IT 業界で輝く星になりたい」

--そして2004年。いよいよ大学を卒業し、シリウステクノロジーズを設立します。まずは310万円を資本金に設立とのことですが。

 確認株式会社化制度(資本金1円で株式会社を設立でき、設立から5年以内に資本金を1000万円に増資する)がちょうど出来た頃でしたので、有限会社ではなく株式会社として立ち上げることができました。

 会社の事業ドメインは、主に携帯事業を中心にしてゆくこととしました。携帯電話やPHSは中学の頃からありましたし、僕は完全にモバイル世代ですから、今後のモバイル事業に可能性を賭けたかったんです。

 最初のメンバーは5人程。創業メンバーがやっていた会社の社員を中心に集ってくれたメンバーです。

--シリウスが立ち上がった頃のビジネスの根幹はなんだったんですか?またシリウステクノロジーズという社名はどこから?

 最初はWEB/モバイルの制作で1年。2004年頃はSNSの開発が始まった頃でしたから、その流れでSNSをさまざまな会社で構築させてもらいました。2004年はIT企業もサービスもたくさんありましたし、僕らは完璧に後発ですからその中でも輝けるサービスをやりたいという思いから、「輝く星=シリウス」ということで命名しました。

 ただ、Siriusという名前はすでに登録されていたし、僕達はサイバーの世界で活躍しようとSを“C”にしてCiriusという名前にしたんです。

「自分にないものをもった優秀な人が欲しい」

--他社との差別化は、事業内容もさることながら「人」だと思うのですが、優秀な人材はどのように探しているのですか?

 一番重要なのは社長である僕自身が「優秀な人に来てもらいたいと強く思う」ことではないでしょうか。自分にないものを持った、あるいは今いる社員にないものを持った優秀な人と一緒に働きたいですね。後は、そういう方々が一緒に働きたいと思ってくれるような会社としての使命が必要だと思っています。「自分たちのサービスで世の中を便利にするんだ!」というような使命ですね。

 僕は、学生時代に起業しているので他の会社で働いた経験もなければ、知識も弱いと思っています。ですから、周りを支えてくれる人々は優秀でなければこの会社のためにならないし、サービスも普及してゆかないと思っています。自分にない経験・バックグラウンドを持っている人々を積極的に採用し、活用して行かないと、「宮澤の知っていることだけがこの会社の価値」ということになってしまいますから。それだと、ゼロに近しいでしょ(笑)

 ですから、シリウスのボードメンバーやマネージャー陣は年上で、経験豊富なメンバーばかりです。同世代の似た者同士で固めても、会社のためにはなりませんしね。

--マネージメントにおける気づきという観点ではいかがでしょうか?

 今も日々模索中ですが、5人から10人,30人と大きくなって行く中で、社員が出すアラートやちょっとした変化に気づけなくなる時期があり、結果、社員を傷つけてしまうこともありました。今ではだいぶ敏感になりましたが。今でも充分には出来ていないと思いますが、社内のコミュニケーションは非常に重要だと思っています。

--意識的に取組んでいることについて教えてください。

 社員は社長が何をしたいのか、どこへ進もうとしているのかを知りたいと思うんですよね。ですから、まず僕がどこへ進もうと考えているのかをシェアすることから始めています。特に、メールではなく口で発現することが重要だと思います。相手に何かを伝えるには、「波長」のある形式が良いと思います。声とか絵とか。白黒のテキストのメールだと、波長がほとんどないので、なかなか相手の心には伝わらないですね。もっとも、僕自身メールで伝えることが多くて、先日うちの役員に注意されたところです(笑)

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