テレビと視聴者の関係については、面白いデータがあるのでここでご紹介したい。野村総合研究所が行ったアンケート調査で、テレビの視聴時間に関して2006年と2007年の結果を比べたものである。
ここで注目していただきたいのが、15才〜29才までの「テレビを生で見る時間」と「録画番組を見る時間」の減少ぶりである。それぞれ4割近く減少しており、若者の急速なテレビ離れが進んでいることを示している。
また、弊社ならびに関係会社で大学生を対象に3回ほどグループインタビューをした際に、同種の質問として「明日、テレビがなくなったら困りますか?」と聞いたところ、驚くべきことに100%の回答が「なくなっても困らない」というものであった。
この背景には、番組を見逃しても「YouTube」や「ニコニコ動画」等の動画共有サイトで見られるし、どうしても見たいものに関しては後日DVDを購入すればいいという考えがある。それを裏付けるように、追加質問で「動画共有サイト等も一切使えない場合はどうか?」と聞きなおしたところ、「困らない」と答えた人は1割にまで激減してしまった。
自分で情報を調べて見つけ出す能力が高い人ほど、「困らない」と回答する傾向が強く、インターネットリテラシーの高さとも比例していた。
野村総研の調査結果を見ても、全体で2〜4割の人がテレビを見る時間が減ってきていると答えている。このことを考えると、企業が生活習慣の変化を見過ごしてテレビCMのみに特化したプロモーション施策を行っていては、将来的なブランドバリュー構築に大きな欠損を与えかねないと言えるだろう。
次の3つのグラフがテレビ、PC、モバイルを媒体別に見た、CMの認知率を表すグラフである。この3つのグラフを比較して分かることは、モバイル>PC>TVの順で、接触回数が少なくても認知率は高いということだ。
テレビの場合、個人GRP(Gross Rating Point:のべ視聴率、テレビCMの放映回数と番組の視聴率をかけた総和のこと)が500GRPのところでCM認知率は31%になっている。500GRPというのは、リーチ(広告を見た人の割合)を80%強と仮定すれば、フリークエンシー(広告が表示された回数)は6回程度だ。つまり、8割以上の人に平均6回ぐらいCMを見せて、広告認知率は31%になるということだ。ところがPCの場合、6回の視聴に対する認知率は60%強、モバイルの場合は6回の視聴に対して70%の認知率を示している。
仮説を立てるに、画面を小さくするとユーザーはコンテンツを注視しなければならず、その結果、テレビやPCより少ない回数で認知率が上がるのだろう。逆にテレビの場合、ながら見が一般的なので、接触回数が多くとも認知率は低いと言う結果になると考えられる。
最近はモバイルで動画を見るユーザーも増えてきている。まだ具体的な調査結果は出ていないが、モバイルにおける動画CMもかなりの効果があるのではないかと、広告ビジネスを考える上で期待している。
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