3月30日、動画共有サイト「YouTube」の広告活用などで注目を集める角川デジックスの代表取締役社長 福田正氏が東京コンテンツプロデューサーズ・ラボ主催の特別セミナーに出演し、「角川グループのWEB2.0/YouTubeの活用戦略」をテーマに講演した。
福田氏は、YouTubeに対する角川グループの立ち位置について「一部メディアなどで『すべて容認した』かのように伝えられることもあるが、これは間違い」と説明。「(YouTubeにアップロードされている)すべてのコンテンツとひとつひとつ向き合い、フーリガンとサポーターの区別をしっかりしていくことを宣言しただけ」と正確な理解を求めた。
違法とする基準については「例えばアニメ作品など、地上波テレビ放送、DVD発売、ビデオ・オン・デマンドなどあらゆる手段で流通が図られているコンテンツの無料動画をアップロードする行為には悪意を感じざるを得ない」とし、こうしたケースにおいては積極的に削除を求めていくとした。
一方で、作品冒頭部分や楽曲を利用した短時間映像については「(JASRACなど)他者との調整を図る必要はあるが、作品を広めるための活用策として有効」とし、プロモーション的概念として認められるとの見解を示した。
また、違法アップロードが横行する背景について「配信サイト自体が赤字だから、コンテンツ制作者は作品を売っても大した利益を得られない。だから魅力的なコンテンツが提供されず、結果的に違法アップロードを招く」という負の循環があることを指摘。こうした状況は、配信サイトが広告によって収入を得て、また福田氏自身も実証実験に携わった動画識別技術によってクリエイター・権利者へ正確な利益配分を可能とすることで解消されるものと説明した。それこそがGoogle社との提携に踏み切ったポイントであるという。
「悪いことをしている人に『それは悪い』と説明するだけでは先に進まない。いい部分を見出して、それを伸ばしていくことが大切。正しいことをする人が増えれば、自然と違反は改善、または淘汰されていく。また、作品クリエイターとして一定の評価・収益をあげることで、他人の著作物に敬意を払う心も生まれる。角川グループとしては、単に違反者を厳しく取り締まるより、良い部分を認めることで健全化を目指す方が早いと考えた」(福田氏)。
当日の講演では、今後、角川グループがYouTube上での展開を検討している広告ビジネスの仕組み、公式チャンネルの内容などを「オフレコ情報」として披露。また、当日集まったコンテンツプロデューサ志望者などに「今後、必要となるのは人材。優れたクリエイターを育成するためにも、彼らにしっかり収入を確保できる優れたクリエイターの存在が重要となる」とエールを送った。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス