楽天、全体相場低迷も株価堅調推移のなぜ

 全体相場が急落している時期にもかかわらず、楽天の株価が堅調に推移し続けている。

 楽天の時価総額は6890億円(10日終値段階)と、新興市場単独上場銘柄としては2番目の水準。新興市場全般の動向に連動しやすく、指数自体を左右する影響力を持つ主力銘柄だ。その楽天株がなぜ、新興市場全般と逆の動きとなっているのか。

“膿”出し切った?

 日経ジャスダック平均株価が2月13日に付けた2007年来安値1509.78円を更新するなど、全般相場が急落した3月7日、楽天株は逆行高した。2月28日に記録した直近の戻り高値も更新した。

 週末を挟んだ翌営業日である10日も株式市場は続落。楽天株は連日で逆行高を演じ、一時、2007年の大納会、12月28日以来の株価5万5000円を回復した。株価チャート的には、今後の上昇期待が日増しに高まっている。

 楽天株が全般相場と逆の動きとなり始めたのは3月に入ってから。市場の関心が今3月期業績から、来期業績へ一気に移る時期だった。楽天自体は12月期決算企業で、しかも業績計画を開示していないが、株式市場では業績改善銘柄と認識されている。

 楽天は2月15日に12月期決算を発表。前期は連結売上高が前々期比5%増の2139億3800万円、経常利益は同92%減の23億7600万円だった。保有していた中国のネット旅行会社株を売却。特別利益を計上して連結純利益は前々期の27億200万円から368億9800万円へ急増している。

 前期の大幅な経常減益には、クレジット事業で250億円規模の利息返還引当金を計上したことが大きく響いている。株式市場の低迷を背景に証券事業の利益も大幅に減少。「楽天市場」を手掛ける主力のEコマース事業でも、新事業への先行投資を行っている。

 しかし、この大減益決算を受けた楽天株は決算発表翌営業日の2月18日、値幅制限いっぱいのストップ高に買われた。前期の利益面を目減りさせた引当金などは、本決算発表前に既に株式市場に伝わっていたもの。株式市場は前期までに金融事業での“膿”を出し切ったと見たようで、更に今期以降、Eコマースを軸とした再拡大期入りを期待しているのだ。

ファンダメンタルズ、需給がともに改善

 株式市場は3月に入り、5月以降に開示される来期業績への期待感をベースに銘柄を選ぶ動きが鮮明化してきている。まだ見えない数字であるのは、業績計画を開示していない楽天の今12月期も同じ。株価への意識もあったのか、決算発表当日に都内で行われた説明会で三木谷浩史社長兼会長も今期業績回復への自信を示す場面もあった。楽天株に対するファンダメンタルズ面への懸念は、ほぼ後退したと見ていいようだ。

 引き続き、強行取得から持分法適用会社化、業務面での提携戦略を探る段階から伸展のないTBS株問題は懸念材料の筆頭。昨今のTBS株の低迷も、本来なら楽天株の足かせになっていてもおかしくはなかった。ただ、現時点では今期業績回復への期待感が先行しているようだ。

 もうひとつ、楽天の株価を支えるものがある。こちらはファンダメンタルズではなく、需給面だ。3月11日、日興アセットマネジメントが組成するETF(価指数連動型上場投資信託)「S&P新興株100」が東証に上場予定。新興市場上場銘柄を対象とした始めての商品で、楽天株を筆頭とした新興市場の時価総額上位銘柄には同ETF組成に伴う買い需要が発生する。

 発行済み株式が少なく、値動きが軽いことが新興市場上場銘柄の特徴だ。楽天株は時価総額の大きさでも分かる通り、新興市場の主力株であり、大型株。過去の下落局面では「自分の重さで下落している」などと、需給の悪さが指摘される銘柄だった。

 ファンダメンタルズ、需給がともに改善。株式市場は楽天株に、今後の新興市場のけん引役となる展開を期待している。

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