日本を代表する音響メーカー、ビクター。今では、数少ない国産スピーカーを作り続ける老舗のオーディオメーカーだ。そんなビクターが音へのこだわりから、2003年に生み出したのが、コーン素材に木材を使ったウッドコーンスピーカー。柔らかく自然な響きを再現できるスピーカーとして注目を集めている。
今回、そのお家芸ともいえる、ウッドコーンスピーカーの技術を応用したインナーイヤー型ヘッドホンを新たに発売した。世界初のウッドドームユニットを搭載したインナーイヤー型ヘッドホンの実力をさっそく検証していくことにしよう。
ヘッドホンといえば、通常、プラスティックの振動板を使っている。プラスティックは、成型しやすく穴なども開きにくいため、製造工程が単純化できるというメリットがある。だが、一方では振動板自体の減衰が少なく、音に雑味が残ってしまうという欠点もある。
その欠点を補う方法として、ビクターは、従来のヘッドホンでは実現できないナチュラルな音の響きを求め、木を使ったウッドドームユニットを開発した。木の振動板の利点は2つある。まずは、音の伝搬速度が速くスピード感のある音の再現が可能なこと。もう1点は、音が適度に減衰(内部損失)するため、無駄な残響が残りにくいという特徴だ。
コンパクトなインナーイヤー型ヘッドホンに木材を使うのは困難が伴うが、比較的丈夫で成型も簡単な樺材を使用することで、ウッドードームの完成にこぎつけた。高域の周波数帯域でピークとディップの差が出にくく、ナチュラルな波形の再現ができ、余韻のある伸びやかで自然な音響を楽しめるという。
ウッドドームユニットを取り付けたドライバーユニットの後ろは、「HP-FX300」でも採用された比重の重い金属を使ったブラスリングをはめ込むハイブリッド構造になっている。通常のヘッドホンでは、ドライバーユニットは、比重の軽いプラスティックなどで固定されている。だが、それでは、ユニットの振動を抑えることができず、音にロスが生じる。ハイブリット構造ならば、ドライバーユニットの動きを固定できるので、駆動ロスをなくすことができ、さらに入力信号に対してリニアな音声を得られる効果もある。
ハウジング部に木材を使っているのも大きな特徴だ。素材は、ウッドドームユニットと共通の樺材。木目のあるデザインは、落ち着きのある高級感あふれる仕様になっている。30〜40代の男性に、とくにフィットしそうだ。
だが、ハウジング部を木材にしたので、デザインだけのためだけではない。ドライバから出た音の響きを作りだすハウジング部を木材にすることで、スピーカーのように、静かに音が減衰していく、余韻のある音響を再現することを狙ったという。
ヘッドホン以外の付属品は、コンパクトな収納ケースとイヤーピースと70?の延長ケーブル。イヤーピースは低反発型素材を使ったものと、シリコン素材の2タイプが用意されている。
シリコンのイヤーピースはS/M/Lの3サイズを用意。インナーイヤー型の場合は、イヤーピースで極端に音が変わることがあるので、初めて聴くときは、すべてのピースを試して好みの音と、装着感のサイズを選ぶとよい。
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