[レビュー]ヘッドホンで、カナルで、ウッド素材!?--ビクター「HP-FX500」 - (page 2)

堀江大輔(D☆FUNK)2008年03月05日 19時00分
ビクター
HP-FX500
内容:ウッドコーンスピーカーで独自の高音質再現を追求するビクターが、 振動板に木を用いたカナル型ヘッドホン「HP-FX500」を開発した。スピーカー以上に小ささと薄さが求められるミクロンの世界を実現した「匠の技」は、ヘッドホンにどんな旋風を巻き起こすのか?

ほかのヘッドホンでは得られない優れた広がり感

 では、さっそく実機を聴いてみよう。

 聴いてすぐに気づくのは、音がとても自然だということ。木を使っているから自然……というとあまりに安直だが、本当にそうなのだから仕方がない。独特の広がりがある音場も大きな特徴だ。

 ヘッドホン特有の頭の中に音が鳴り響く頭内定位がなく、頭の周辺に音が広がっていく感じがある。ボーカル、ドラム、ベースといったそれぞれの楽器が広がるので、狭苦しくない、広いステージで音楽が再現されていく。

  • 一見するとサイズが大きく感じるが、装着すると通常ヘッドホンと同程度。耳の後ろから回しかけるタイプではなく、通常の装着方法となる。

 

 では、それぞれ聴く曲を変えて聴いていこう。

 日本でもっとも有名な女性ギタリスト村治佳織の最新アルバム「Viva!Rodrigo」の中から、クラシック・ギター最高の協奏曲「アランフエス協奏曲 第3楽章:Allegro gentile」を聴いてみる。

 非常に正確でナチュラルな音というのが第一印象。とてもクリアで明快。アルペシオの短音が明確に聞こえてくる。もともとギターとオーケストラという組み合わせで再生自体は難しいのだが、少しギターが寂しい印象がある。

 このあたりは、ヘッドホンが中低域はへんに強調していないので、出にくいところなのかもしれない。だが、オーケストラの再現は素晴らしい。バイオリンのピッチカート(弦をはじく演奏)は、コロコロとしていてとても歯切れがいい。ピッコロやフリューゲルホルンなど、管楽器系の倍音がキレイに伸びている。高域部分がどこまでも伸びていく感じがある。

 続いてボーカルものを聴いてみよう。2007年、アメリカウィスコンシン州ミルウォーキーで行われた、ノラ・ジョーンズのライブ音源「Until the End〜 Live In 2007」。

 エレキギターのアルペシオをメインに、少し掠れているけれども、、女の子らしいカワイイノラの声が魅力。カントリー&ブルースのバラードといった趣の曲だが、ドラムが入ってきてからの盛り上がりが聴きどころだ。

 他のヘッドホンで聴いたときには、ライブハウス演奏というのが、しばらく分からなかった。でもHP-FX500では、会場の雰囲気が直に伝わってくる。ボーカルが直接触れてくるかのようなリアリティだ。

 音が非常に近く感じるのだ。ミュートを掛けたエレキギターのアルペシオとボーカルがメインの冒頭部では、ノラの枯れた声、唇のこすれる音まで聴こえてくる。バックでは、ドラムが通常のスティックではなく、ブラシで叩いている様子まで聴き取れる。情報量が圧倒的に豊富なライブが楽しめた。

 続いて、ロックを聴いてみた。神戸発の女子2人組ロック・バンド、MASS OF THE FERMENTING DREGSの初音源「ハイライト」。

 螺旋状に絡まるギターと突進するベース、雷のようなドラムが特徴のラウドロック。音が濁っていること自体は魅力なのだが、普通のヘッドホンで聴くと、濁り過ぎでわけがわからないということがよくある。このバンドは、女の子っぽい歌い方と、強烈なリフとのギャップが面白いのだが、普通のヘッドホンではほとんど何をやっているのが分からない。 とくにドラムは限界まで叩いているので、ぐしゃぐしゃになってしまう。

 だが、「HP-FX500」の音の分解力は高かった。もともとこのバンドは、歌詞がまったく分からないことでも有名なのだが、きちんと拾っていて、何を歌っているのか結構分かる。さらに、エフェクターをかけて、シンセのように聞こえるコーラスを入れていることにも初めて気づいた。濁ったパワーの中に、ベースラインやドラムのリズムがたっているので、モニタライクに聴ける解像度の高さもあるようだ。

  • 木の質感とコロンとしたボディデザインが目をひく

  • イヤーピースを外したところ。外側にはビクターロゴとおなじみのビクターマーク

  • 内側はLR表示のみが印刷されている

  • バックスタイルは装飾が施され、高級感あふれるデザイン

  • 木目はハウジングに使用している木材によるため、ひとつひとつがすべて異なる

  • サイド。ウッドな質感が大人な雰囲気のため、30代以上の男性ユーザーも自然に身につけられる

●開発者インタビューはこちら

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