伊藤 いやいや、楽しい仕事ですよぉ。とくにいい音にむかっているときは(笑)。まあ、うまく前に進まないときもありますけどね。これでなんか打破できるだろうなと思ってトライするんですが、うまくいかないと少ししょげますね。
50点を60点にするのは簡単なんです。だけど92点を93点にするのは本当に大変。技術のこだわりと時間の勝負なんです。今回は、納得いくとこまで追っかけていき、商品化できました。
音作りでは不要な振動を徹底的に排除し、大元の音をよくすることにこだわりました。ジャンルに合わせたチューニングをすることもありますが、今回は、原音追求。大本の音をよくすれば、どんなジャンルの音でも響いてくれるという方法論を用いました。このリアルに広がる音は、他のインナーイヤーにはない。最終的には圧倒的な臨場感のある原音を出せたと思っています。
澤田 2年以上の歳月を費やしています。でも、製品化を実現する期間としては早かったですよ。もともと自社での木への取り組みがなかったら、とても2年ではできなかった。ウッドコーンの開発があって、その応用としてのヘッドホンなんです。
今回は技術チームにも時間をつめてもらったので、なんとか2年でできました。大型のヘッドホンにすれば、もっと速く完成したと思いますが、より多くの人に使ってもらうということを考えたら、密閉型のインナーイヤーしかなかった。自分が使っているデジタルプレーヤーで、いい音が聞きたいというお客様の要求は、非常に高いものですが、それになんとか答えられたかなという思いはあります。
柿本 衝撃でしたね。今まで聴いてきた音楽を全部聴き直したくなりました。ヘッドホンを耳にしてできあがる音場の中に、音として感じられていなかった微細な楽器の音色まで、しっかりと定位して聞こえてきたのです。
デジタルオーディオプレーヤーというと、プレーヤーのメモリ容量を確保するため、オリジナルの音源を圧縮しており、その結果再生音が今ひとつなのだというイメージが私にはありました。でも、このヘッドホンで聴くことで、実はヘッドホンによるところが大きいんだということを改めて認識させられました。
伊藤 まさか今のようにヘッドホンに注目が集まる時代がくるとは夢にも思わなかった。十数年地道に築き上げてきたヘッドホン作りのノウハウがようやく、世界初のウッドドームユニットとして結実できたと思います。
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