東芝は2月19日、代表執行役社長 西田厚聰氏出席の下、記者会見を行いHD DVD事業からの撤退を表明した。
この決定により、HD DVDプレーヤー、レコーダーは今後の新製品開発、生産が中止され、現行製品の流通においても出荷を縮小。今年3月末を目処に東芝として事業を終了する予定だ。
西田社長は「HD DVDにおける利便性、製品としての優位性に対する自信は変わっていないが、現在の市場環境を直視し速やかに終息するのが正しいと判断した」と話す。
昨年末の段階で、国内ではHD DVDプレーヤー1万台、レコーダー2万台を販売。海外では北米で約60万台、欧州で約10万台(ともにHD DVDプレーヤー)を売り上げ、PCドライブまで含めた販売総数は約200万台を数える。こうした状況からも海外市場を含めた販売は積極的に展開されていたと言える。
しかし1月にWarner Bros. EntertainmentがHD DVD陣営からの離脱を表明したことで、市場の流れが一気にBlu-rayへと傾いた。
「ワーナーによる離脱は、寝耳に水の話だった。突然の方針転換が与えた影響は大きい。ワーナーが去った後HD DVDを続けていくのは逆に消費者に迷惑をかけてしまう。ここで勝ち目はないと判断した」と言う。
今後はHD DVDの現行ユーザーに対し、サポート体制の強化を行うほか、HD DVDディスクに関しても、一定期間購入ができるようディスクメーカーとの協議を進めているとのこと。
注目が集まる今後のレコーダー事業に関しては、「現行のDVDプレーヤー、レコーダー事業は従来通り継続する。だが、現段階ではBlu-rayプレーヤー、レコーダーの生産計画は全くない」とし、次世代レコーダーに関しては、「NAND型フラッシュメモリや小型HDDといったストレージ技術、画像処理技術、次世代CPU、ワイヤレス技術、暗号処理技術などをいかし、新たなデジタルコンバージェンス時代に適した次世代映像事業を行っていきたい」とした。
また記者会見上では、HD DVDの撤退とともに半導体新製造2棟を三重県四日市市と岩手県北上市に並行建設することを発表。これにより、NAND型フラッシュメモリの生産能力の増強、次世代メモリの生産拠点としての活用も視野に入れた展開を図る。新製造棟2棟は、2009年春に着工し、2010年の竣工を予定している。
今回の増強体制に対し、西田社長は「NAND型フラッシュメモリの供給能力を拡大することで、競争力を確保し、市場のリーダとしての位置づけを確固たるものにしたい」とした上で、「今回はHD DVDの終息、NAND型フラッシュメモリの生産拡大という、事業の集中と選択という性格の異なる意思決定を行った。これからもスピード感を持って経営を邁進していきたい」との決意を話した。
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