2007年に10周年を迎えたサイボウズが、同じ年についにグループウェア国内市場のシェアで第1位を獲得した。2006年まではM&Aを積極的に進め、グループウェア以外の事業領域への進出を模索してきた同社だが、「やはり僕らはグループウェアの会社。2007年は象徴的なシェアトップがあり、象徴的なサイボウズ Officeのバージョンアップがあった。グループウェア回帰の年と言えるかもしれません」と代表取締役社長の青野氏は語る。
1997年8月に高須賀宣氏(現LUNNAR President&CEO)、畑慎也氏(現サイボウズ・ラボ代表取締役)、そして青野慶久氏(現サイボウズ代表取締役社長)の3人が、愛媛県松山市で創業。
ロータスノーツという巨人が立ちはだかるグループウェア市場に、サイボウズは1997年10月、シンプルかつ安価なウェブ型グループウェア「サイボウズ Office 1」で参入した。
10年経って、最新版サイボウズ Officeはバージョン7となった。ノークリサーチの調査データ「ITアプリケーションの利用実態調査(2007年)」によれば、サイボウズのシェアはOfficeと中堅・大企業向けの「ガルーン」を合わせて25.6%に達する。
現在の開発体制は約90人。様々なソフトを並行開発できるような体制が整えられている。昔のサイボウズでは1つの製品を作っていると他の開発が止まり、同時にいくつものプロジェクトを動かすのは難しかったという。
社員数は200人ほどで、年間30人程度採用している。開発部隊の他に、営業やマーケティングコミュニケーションなどを含むカスタマー本部がある。人数的には、開発が90人、カスタマーが90人、スタッフ部門が20人とう内訳だ。
それでも採用活動には苦戦はしているという。「ITベンチャーの人気が落ちてきたと強く感じている。特に新卒は顕著だ」とサイボウズ 人事本部の森岡貴和氏は話す。要因をきくと、一つは安定志向がある。大企業で採用枠が広がってきたことから、大きな組織で安心して働きたいと考える人が増えてきているという。
特に営業向けの文系学生では、「考える力があって、行動力もある子は、銀行や商社、大手メーカーに行くケースが多いかなと思います。ものすごく重要なセクションと思っているんですが、なかなか採れていないですね。新卒の採用は、特に文系男子に力を入れたいですね」(森岡氏)
青野氏は求める人物像を次のように語る。「サイボウズはメーカー気質な会社だと私は思っていまして、コツコツ物を作って、コツコツ売る。ベンチャーらしからぬ社風があるんですね。なので、そこに合う人が基準になるので、『俺はここで一攫千金を狙うぜ。名を挙げてベンチャー企業を立ち上げるんだ、オー!』みたいな人はあまり合わないんですよ。『みんなで協力しながら、グループウェアを作ってコツコツ売るぞ。10年、20年頑張るぞ』みたいな人のほうが合うんです。なので、その辺のコツコツさ、まじめさ、誠実さ、継続性などがある人が向いていると思います」
「自立は大事ですけど、農耕民族なんです。ネット系のサービスの会社って、サービスを企画したら3カ月でドーンと立ち上げる、みたいなところが多いですが、サイボウズの場合だとたぶん企画してから1年後、下手すると3年後にリリースなんですよ。そうすると、種をまいて刈り取るのが1年後ですからね、本当に気の長いビジネスなんですよね。なので、その分じっくり取り組めるというメリットがあるわけですが、なかなか農耕民族じゃないと合わない」(青野)
企画から時間をかけるのには理由がある。企業向けのソフトを作っているため、思いつきでリリースしても買ってはくれない。企業の要望を聞きながら、それに合うパッケージを企画し、品質管理にも責任を持って取り組んでいく。永遠のベータ版は許されない世界だ。
「品質管理も開発期間と同じぐらい、いやそれ以上に時間をかけます。販売もパートナーさんに教育をして、サポートしていただけるような体制を作って、ようやく売れていくという感じなのです。これもネットでサービスを立ち上げて、広告でというスピード感はまったくありません」(森岡氏)
いかにもネットベンチャーな開発体制とは対極にある。とにかく確実なものを出していく姿勢だが、グループ内にはまったく対照的な会社も存在する。サイボウズ・ラボだ。
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