次世代光ディスク戦争の陰で、映像コンテンツの配信に乗り遅れる日本 - (page 2)

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 当初、強気を崩さず一枚岩にも見えたAMPTPにも、今年に入ってついにほころびが見えてきた。メジャースタジオのひとつであるMGMの配下で、俳優のトム・クルーズが経営するUnited Artistsが真っ先にWGAとの暫定契約を1月10日に締結。その後、The Weinstein Company、Worldwide Pants、Spyglass Entertainment、Media Rights Capital(MRC)、Jackson Bites、Mandate Films、Sidney Kimmel Entertainment、Lionsgate、Marvel Studiosら、中堅映画会社が続々と暫定契約を結ぶようになった。

 そして、AMPTPは1月17日に全米監督組合(DGA)と先に報酬及びロイヤリティの料率に関する合意を締結。22日には依然としてストライキを継続するWGAと非公式の協定に入ったことを発表し、そのストライキの終結は時間の問題といわれるようになってきている。また、内容次第でSAGのストライキも回避できるのではないか、という予測もなされている。

映画関係者のストが意味するもの

 WGAが求めていたのは、収益源として現在主流であるDVD、そして今後急速に成長するであろうオンライン配信など二次利用時のロイヤリティ配分の増率だ。AMPTPとしては、プロモーション費用の増大などにより急速に収益が悪化しつつある映画興行、単価の急落が抑えきれないDVDなど、これまでのビジネスモデルの崩壊が確実になりつつある現在において、次なる収益手段と期待されるオンラインでの映像コンテンツ配信で脚本家に有利な料率を与えることは大きな決断となる。

 もちろん、オンラインによる配信はまだまだ発展途上のビジネス領域であり、これまでの興業やDVDなどと比べて単価は低い。たとえばビデオオンデマンド(VOD)などの一般的な価格は3〜5ドル程度であるに対して、米国における1人当たりの平均映画チケット収入は6.6ドル。DVDの販売価格はそれらよりは高いものの、平均市価で10〜25ドルくらいまで下がってきている。加えて、技術の標準化がなされていないことや、違法コピー流通が際限なく増加していることなど、決して楽観できない現実はもちろんある。

 しかし、CESに遅れること1週間、サンフランシスコで開催されたMac Expo 2008で発表されたAppleのiTunes Movie Rentals(米国内では1月15日より開始、2月末にはメジャースタジオ作品を中心に2000タイトル以上を取り揃え、旧作を2.99ドル、新作のハイデフ作品を4.99ドルとし、廉価な価格設定を行っている)など、映画コンテンツがより流通しやすいしくみが整備されつつある。一部の証券アナリストは、こういったVODやIPTVの新たな形が出てきたことを受けて、既存のCATV会社をはじめとするコンテンツ配信事業者の評価を下げるなどの態度をとりはじめた。

 次世代光ディスクに代わってハードディスクの勝利をうたうプレーヤーも現れている。いずれにしろ、かつてのVHSやDVDのような形でのハードウェアとコンテンツとの蜜月は再び起こらない可能性は高い。すでにメジャースタジオの多くは、かつてビデオなどの事業部門のオフィスの一角に間借りして発足したインタラクティブ事業部門に、ビデオやDVDを取り扱うホーム事業部門を逆に取り込ませるといった体制の再構築を終えている。いざともなればオンライン中心のビジネスへ移行することは容易だ。

堰を切り始めたオンライン映像配信

 映画やテレビ作品の権利関係者の合意を取り付けてしまえば、一挙にオンラインをベースとした配信ビジネスの威勢が強くなっていくことは、誰の目にも明らかだろう。メジャースタジオとの暫定合意はなされていないものの、近く到達するであろうAMPTPとWGAの合意形成は、まさにその瞬間を示すことになるはずだ。

 ユニオン(組合)のストライキが常に潜在危険因子であるため、かつてアニメ作品への注力へと大きく舵を切ったこともあるハリウッド。そのときも、ブロックバスター型(大型作品・大量宣伝型)の興業マーケティングを徹底して行い、トップランキングでも上位に入る作品を連発させることにこれまで成功している。

 オンラインの流れを是として、ハリウッドメジャーがIPを用いた配信に積極的に乗り出しはじめるとしたら、いかなる戦略をとるのであろうか。コンテンツ大国を目指すという我が国は、どういう対処策を持ちうるのか。ケータイフィルタリング問題や著作権法の改定で右往左往し、コンテンツ漂流とまで揶揄される国情の中、プレーヤーが官か民かを問わず、積極的な対応をすべきタイミングにあることには間違いないだろう。

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