音声合成ソフト「初音ミク」を使った着うたの配信に関して、ドワンゴ・ミュージックパブリッシングとクリプトン・フューチャー・メディアが争っていた問題で、両社が12月25日に共同声明を発表した。権利関係について今後の方針を明文化するとともに、今後は事実関係について争わず、独自の主張をしないことで合意した。
今回の件は、ドワンゴが配信した楽曲「みくみくにしてあげる♪」に関してクリプトンの合意がないまま社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)に管理業務が委託されたとクリプトンが抗議していた。また、複数の人物が、きちんとした契約を結ばないままドワンゴから自分が初音ミクを使って作曲した楽曲が着うたとして配信されたとネット上に書き込んだことに対し、ドワンゴの子会社で音楽著作権を管理するドワンゴ・ミュージックパブリッシングがクリプトン側の問題だと非難していた。
両社が互いの主張をブログで書いたことから、それぞれの言い分に対してさまざまなブログで意見が書き込まれていた。
両社はまず、「「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」を含む「初音ミク」関連楽曲の着うた配信に関し、音楽データ(原盤)制作者様、両社のユーザー様に混乱と不安感を招いてしまいましたことにつき、深く反省しお詫び申し上げます」と謝罪。続いて、以下の点について合意したことを明らかにした。
まず、両社は今後、この件に関する経緯や事実関係に関して争わず、独自の主張をしないことで合意したという。また、現在ドワンゴのサイト内で配信されている「初音ミク」関連の着うたに関しては引き続き円滑に配信できるよう、著作権者との契約締結を協力して進めるとのことだ。
また、契約が口約束ベースだったとクリプトンが主張していた点については、今後初音ミク関連のコンテンツを新規に配信する場合には、音楽データ(原盤)制作者との契約を事前に締結すること、締結が終わるまでは配信しないことを確認したとしている。
権利関係については、楽曲の著作権のほか、初音ミクというキャラクターの著作権や、ソフトの利用規約などが複雑に絡み合っていたことが原因の1つとなったことから、明文化することで今後のトラブルを防ぐ考えを示した。
具体的にはまず、初音ミクのキャラクターの著作権および名称に関する商標権はクリプトン・フューチャー・メディアが保有すること、また、初音ミクを使って作られた楽曲については、使用条件の下で音楽データ(原盤)制作者が権利を持ち、その権利代行会社は制作者が決められるとした。
ただしアーティスト名などに「初音ミク」という言葉を使って着うたを配信する場合には、クリプトン・フューチャー・メディアと音楽データ(原盤)制作者、もしくはその代行会社との間で別途、許諾が必要となる。
また、初音ミクを使って作られた音楽データ(原盤)に使用されている楽曲の権利は、作詞家、作曲家が持つ。 作詞作曲者は、楽曲の権利行使代行会社を自らの意思で決められる。
ドワンゴ・ミュージックパブリッシングは、初音ミクを使って作られた音楽データ(原盤)に使用されている楽曲に関して、楽曲の管理を著作者に申し入れる際は、JASRACだけでなくイーライセンスなど他の著作権管理団体への信託できたり、もしくは管理団体に信託しないという選択肢があること、さらにそれぞれを選んだ場合のメリット、デメリットを説明した上で、著作者の意思を確認することとしている。
また、音楽著作権の処理に関しては、現在のシステムやルールがネットでの利用に対応しきれない部分があるという認識で一致し、新しいシステムやルールを構築できないかを両社で協力して検討するとしている。
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