Diggの効果--トラフィック誘導を超える固有の意義を分析する - (page 2)

文:Alex Iskold 翻訳校正:吉井美有2007年12月25日 08時00分

Diggされる“コツ”はあるのか

 投稿した記事がDiggのアルゴリズムのすべての項目に当てはまれば、そのサイトはDiggのフロントページに載り、投稿者とそのサイトのホスティング会社は特別扱いされる。Diggからのトラフィックは、1秒あたり1ヒットにもなる。1分間で60ヒット、1時間では3600ヒットにもなる。つまり、Diggのフロントページだけで15の記事が掲載されるため、1時間あたり5万4000クリック、1日に130万クリックを発生させることになる。大きな数字だ。

 3月にはDiggの登録ユーザー数は100万に達したことがわかっている。面白いのは、フロントページを積極的に見ているユーザー数の推計だ。ウオッチャーが1時間にすべての記事をチェックする時間があったと仮定すると、任意の時間に少なくとも3600人がフロントページを見ていることになる。

 しかし、Diggのフロントページはリンク対象として人気があるだけでなく、ウェブ上での情報普及に関する大きなゲームのフィルタでもある。

Diggとニュース普及の経路

 Diggはフィルタだ。必ずしも完璧ではないが、Diggは人間による情報フィルタである。このフィルタを通るものは、人間にとって、より正確にはDiggユーザーにとって面白いものだ。ここで、Diggがニュースの生態系の中で果たす役割について考えてみよう。

img ニュースの生態系とDigg

 メディア企業とブログ界を出所とするニュースはいくつかの経路を辿る。まず、生のニュースがBloglines、Google Reader、Netvibesなどの集約サービスに集まる。もう1つの流れは、Techmemeのような自動人気計測サイトだ。Diggとは違ってTechmemeはアルゴリズムで動いており、その記事を話題にしている情報源の数や互いのリンクなどに基づいて人気度を計算する。3つめの経路がDiggを通るもので、これは人間によるニュースフィルタだ。人々が最も優れていると考えた記事がブックマークされて、del.icio.usのようなサイトに永久保存される。

 記事の辿る経路の中で最もおもしろいのが、Diggのフロントページに載り、その後del.icio.usのようなサイトに保存されることだ。それらの記事は現在も面白く、人々がそれをブックマークしたいと思ったということは長期的な価値も持っていることになる。Googleは同社のインデックスでこの経路を活用しており、これらの結果に高い重み付けを与えている。

Diggと自己組織化

 Diggにはニュース以上に興味深い一面がある。人間が作った自己組織化システムの最も成功している例だということだ。過去数十年間、科学者たちはいかにして単純なルールが複雑系を作り上げるかを発見してきた。彼らが発見した主要な原理のひとつに、自己組織化の原理がある。

img

 自己組織化は物理、生物、そして社会のシステムに幅広く存在する注目すべき現象だ。この現象は、銀河が形成される仕組みの中心をなしており、アリが巣で協調する仕組みであり、人間が社会を形成する仕組みだ。生物学者は自己組織化の概念を使って動物の皮膚の形成パターンや鳥の集団飛行、そして生命そのものの起源を説明できると考えられている自己触媒的な化学物質などを研究している。

 自己組織化は自然界で機能しているが、これを工学的に再現するのは簡単ではなかった。この点もDiggの特徴だ。Diggは人為的に作られた自己組織化の科学的な実験なのだ。確かに、システムを悪用から守るために提供元がアルゴリズムを改良しなくてはならなかったという意味では、Diggのシステムは完全に自動制御ではない。しかし、その大部分は多かれ少なかれ自動的に制御されている。最近のHD-DVDのキーが晒された件の例は、Diggがそれ自身の生命を持っていることを示している。

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