「Commodore 64」の生みの親、J・トラミエル氏インタビュー - (page 3)

文:Daniel Terdiman(CNET News.com) 翻訳校正:大熊あつ子、吉武稔夫、高森郁哉2007年12月19日 14時05分

--C64があれほど幅広い支持を得たのは、何が理由だと思いますか。

 あらゆるものを取り入れたからです。サウンド、ビデオ、フルキーボード、それにカラー表示を取り入れました。使いやすい製品だったのです。さらにその後も、ソフトウェアの供給など、さまざまな素晴らしい出来事が続きました。それに、私は米国だけを当てにしていたわけではありません。以前に計算機やタイプライターを販売していたときの人脈で、すでに世界各国に販売店のネットワークを持っていたのです。ですから、コンピュータを持って販売店を再訪するのは簡単なことでした。販売店にC64が消費者向け製品であることを説明し、乗り換えてもらうだけでよかったのです。こうしてC64は大当たりしました。若い人たちがC64を買えたのは、非常に手ごろな価格だったからです。

--C64のBASICは、未来のプログラマーたちにどれほどの影響を与えたのでしょうか。

 世界各地の展示会に出向くたび、ドイツのハノーバーでの展示会(世界有数の電気製品展示会である「CeBit」のこと)では特にそうでしたが、12歳から20歳くらいの若い子たちが私の周りにやって来て、自分の預金通帳を見せるのです。彼らは口々に、「Tramielさん、私は今年ソフトウェアを売って20万ドル以上稼ぎました」などと報告したものでした。これは本当にうれしい出来事でした。私は、自社の従業員を裕福にしただけでなく、若者たちも裕福にしていたのです。彼らは、懸命に勉強してBASICでソフトウェアを作ればお金を稼げることを知っていたのです。

--私が高校生のころは、C64、Apple IIe、それに「Atari 800」の各ユーザーの間に、まるで文化戦争のような対立がありました。当時のコンピュータやそのユーザーについて、どのような違いがあったと思われますか。

 違っていたのは価格だけです。というのも、米国では、価格の安い製品は良い物であるはずがなく、同じ製品でも価格が高ければ優れた製品に違いない、と思われるからです。でも、だからといって私はあきらめませんでした。それでも低価格で販売したかったのです。しかし、コンピュータに3倍の金額を支払った人は、買ったコンピュータを自慢するに違いありません。それだけの額を支払ったわけですから。自分が愚かだったとは言えません。

--ということは、どのコンピュータも同じようなものだったとお考えなのでしょうか。

 どれも同じです。今でも、各社のコンピュータに違いはありません。HPを買おうがDellを買おうが、すべて同じです。

--しかし、人々は当時、忠誠心を持っていたように思われます。ちょうど今、MacユーザーとPCユーザーがそれぞれ忠誠心を持っているようにです。

 忠誠心などというものは全くありません。一方のシェアは95%、もう一方は5%なのですよ。ただし、私が思うに、Appleは今、自分たちにできる最も賢明なことを実行しています。彼らは消費者向けの企業になりつつあり、あらゆる人に向けて、コンピュータだけにとどまらず多くの製品を販売しています。

--C64以降に登場したコンピュータやオペレーティングシステムで、C64を思い起こさせるようなものはありましたか。

 どれも全く別物という印象です。われわれは今、はるかに進んだ異なる世界に生きています。今日のコンピュータビジネスは、1975年当時とは違います。ある部分では良くなり、ある部分では悪くなっています。しかし、重要なのは、われわれ全員が懸命に努力した結果、今日の状況がもたらされているということです。誰もが「コンピュータなしの生活なんて考えられない」と口にするなんて、素晴らしいことです。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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