大企業の中でも、起業家精神は死なない—走り続ける「イントレプレナー」(第5回: 本間毅) - (page 3)

起業という偉大な体験あってこそ

--大きな資本がある中で、大きな仕事をやる楽しみは?

 以前は人・物・金を集めるところからはじめて、ないリソースの中でいかに面白くするかを考えていたわけで、それはそれでとても良い経験でした。しかし、今はリソースがある中でやれるわけですよ。これまでとはまた違ったところに頭を使えるという楽しみがありますね。与えられた環境だけれども、クリエイティブな能力を発揮して新しいものを創るというのは面白いです。

 ソニーブランドもさることながら、多様性が面白い。映画、音楽、ゲームにエレクトロニクス。たくさんあるがゆえの苦労やジレンマを、これまでこの企業は経験してきていますし、ソニーのネットビジネスは前人未到なんですよ。反対意見もありますが、大勢が反対する中で自分の信念を貫くというのは、これまでもやって来ているわけで、何も変化するものはないんですよ。スプリットは昔と変わっていません。

 また、ソニーと協業することでバリューが上がる企業はたくさんあるわけですから、僕はその橋渡し役になりたいと思っています。だから敢えて、アントレプレナーではなく、「イントレプレナー」という表現をして、自分自身のアントレプレナー的なマインドを忘れないように心掛けているんです。

--では、その本間さんが現在携わっているサービスについて教えてもらえませんか?

 ソニーの今後のネットメディアをどうすべきかを僕の所属する事業部は考えています。ようやく新たなサービス「eyevio」が立ち上がったばかりなので、これからはフルスロットルですね。

 このプロジェクトは現在6人でやっています。当然社外の方々のサポートがなくてはできませんし、当時からの知り合いとこれまでとは違った形で協業ができているんです。このサービスを成功させることが、ソニーの次の形の礎になると信じています。

本間氏 「起業したという経験こそが、さまざまなところで生かされていくということを知ってもらいたい。それがたとえどのような結果になったとしても、決して、後ろ向きなことではない。そのことを、これからの日本を担う若い人たちには特に、知っておいてもらいたい」

--モチベーションの高さが目を見ていると伝わってきますね。それではいつもみなさんに聞いている質問なのですが、本間さんのお気に入りの本について教えてください。

 その都度好みが変わるのですが、ここ最近であれば「ブルー・オーシャン戦略」は面白かったですね。あとはバズマーケティングに関する本など。

--趣味はいかがでしょうか?

 料理は食べるのも作るのも好きですね。そして旅。一度も行っていないところに行くというのは良いですね。北京にシンガポール、パリにプラハ、つい最近ではペナンとホーチミンに行きました。旅を良くするも悪くするも、人と食べ物と景色――この3つですね。その意味ではプラハは良かった。ご飯もおいしいし、ビールも美味しい。

--尊敬する人はどのような人でしょうか?

 冒頭の話に戻りますが、やはり両祖父ですね。商売とクリエイティブな思考がブレンドされましたから。

やりたいことと会社の方向性は一緒ですか?

--最後に、本間さんはベンチャーの社長から大企業への転向と活動のステージを変えましたよね。では、大きい会社でいかに楽しく生きるかという観点では現在どのようにお考えですか?

 僕が思うのは、逆算したら面白味がなくなるのではということですね。あと何年で部長に、あと何年で支店長になってというような。基本的に、出世は関係ない。自分がどれだけ会社に貢献できたかの結果をまともに評価されれば出世するわけですから。

 自分がどの仕事をどうやれば、自分の能力・経験が最大に生かせて、会社に儲けさせることができるか。これが見つかれば、大企業だろうとどこだろうと楽しいですよね。

 もう一つは、やりたいことと会社の方向性がいかに一緒になるか。やりたいことが他にあるから会社を辞めるというのも一つの方法ですが、会社内でやりたいことをどうドライブするかも大事だと思っています。

 どんな会社に身を置こうとも、世の中のためになることができるかどうかを考えることは、すごく重要だと思います。そのために自分の時間を費やすわけですから。僕としては、今このソニーでネットメディアをどうして行くかを考えることが、自分、会社にとって、さらには世の中のために一番貢献できることだと信じて活動しています。

 また、今の環境で自分がもっともっと活躍し、会社をたたむことは悪いことでも怖いことでもなく、むしろその起業したという経験こそが、さまざまなところで生かされていくんだということを知ってもらいたい。起業するということは、それがたとえどのような結果になったとしても、決して、後ろ向きなことではないんです。そのことを、これからの日本を担う若い人たちには特に、知っておいてもらいたい。

Venture BEAT Project
こだまん(児玉 務)

1997年日本アイ・ビー・エム入社。ベンチャー企業との協業、インターネットプロバイダー市場のマーケティングを経て、2000年よりナスダック・ジャパンに出向し、関東のIT企業および関西地区を担当。帰任後は、IBM Venture Capital Groupの設立メンバーとして参画し、その後退職し米国へ留学。パブリックラジオ局(KPFA)での番組放送の経験を得て帰国後の現在は、「“声”で人々を元気にする」をモットーにラジオDJ、イベント司会、ポッドキャスティングの分野で活動中。「Venture BEAT Project」プランニングメンバー。好きな言葉は「アドベンチャー」。

ブログ:「Edokko in San Francisco 2007

趣味:タップダンス、ビリヤード、会話、旅、スペイン語

特技:アメリカンフットボール、陸上競技100m

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