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大企業の中でも、起業家精神は死なない—走り続ける「イントレプレナー」(第5回: 本間毅) - (page 2)

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幻となった最年少の上場企業社長

--当時はインターネットというよりも広告やイベント系の学生起業が多かったと思います。本間さんの周りにはそういう方が多かったのでしょうか?

 僕の大学には起業している人がほとんどいなかったんです。周りに比べてここは遅れているんじゃないかという危機感もあって、1996年の大学祭の時には、学食に50台のパソコンを並べて、インターネットカフェをやったりましたし。

 事業を立ち上げた当時は、中小企業のウェブ制作を軸にしていて、とにかく人の紹介に次ぐ紹介で仕事をもらっていました。わらしべ長者みたいなものですが、最初の一本の藁がなければ、今に繋がらないものってたくさんあると思います。あのころは本当に楽しかったですよ。

本間氏 「最年少の上場企業社長を狙っていましたが、2000年夏ごろから売り上げが落ちてきました。その原因がバブル崩壊の兆しだったことに気づかなかったというよりも、認めたくなかったんですね」

 当時はブラウザが賢くなかったので、僕でもできたんです。有限会社化する1997年まで、ほとんど儲かっていませんでしたが、人との出会いや自分がやりたいと思っていた経営を勉強しているというところにモチベーションがありましたね。 出会いという観点では、そのころ他の大学、例えば青山学院大学や慶応義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)でインターネットをやっていた連中と繋がって、それがその後の「電脳隊」に繋がっていますからね。

 どれだけやったら人に認めてもらえるかではなくて、やっていることを発信することがインターネットの良いところなのだから、いかに小さくても自ら発信することが大事だと考えました。

 インターネットの可能性に対して感じた直感は、今現在でも変わっていません。まさかここまで一般化するとは思いませんでしたけど。

--1994年からはじめたインターネットビジネスは、1997年にイエルネットの法人化で一気に加速するわけですが、周りの反応はいかがでしたか?

 鳥取の親戚は大反対しましたね。「長男なのだから実家を継げ」と言われましたが、僕は何としてもイエルネットを継続したかった。だから、それまでに取り上げられたメディアのコピーを大量に送りつけて親戚を説得しました(笑)

 僕の人生、何故だかさまざまな物事の順番が逆なんですよ。企業に入る前にベンチャーをやって、学校卒業する前に仕事を始めてしまったりと。会社法人化したあとも、留年していましたから、仕事しながら学校に行ったこともありましたね(笑)

--1999年から2000年にかけて、東証マザーズやナスダック・ジャパン(現:大証ヘラクレス)といった株式市場も新設されて、いよいよITベンチャーを取り巻く環境は変化・加熱していきます。そのなか、イエルネットも株式上場の準備に入っていきますが、その当時を振り返ってどのように思いますか?

 本気で目指していましたよ。準備も6割程度終わっていて、2000年11月の上場を目指していました。最年少社長を狙っていたんです。でも、2000年夏ごろから売り上げが少し落ちてきていたので、もう少しきっちり力を付けてからという方針に変えたんです。しかしその原因がバブル崩壊の兆しだったことに気づかなかった。気づかなかったというよりも、認めたくなかったんですね。

 さらに、その段階までくると自分が立ち上げた会社ながら、さまざまな人の思惑が絡んできますから、「この会社は自分の会社なのか?」という感じにもなりますよね。一気に資金繰りに関する意識も薄くなりましたし、自分自身で売り上げを作らなければならなかったのが、「如何にして資金を有効に使って行くのか」という視点に変わりましたから。

 成長して行く中で、いかにして緊張感や会社経営のモチベーションを持ち続けられるか――。これらの視点ですべての経営者を僕は尊敬しています。上場することだけがゴールだとしたら、モチベーションなんてあったもんじゃないですよ。

「早く、誰かタオルを投げてやれ」

--そして、話は2002年から2003年の激動の年になるわけですが。

 イエルネットとしての売り上げはそんなに落ちてはいませんでした。お客様には恵まれていましたし、良い仕事もしていましたが、仕事の絶対量が減っていたんです。2002年には頑張っても売り上げは増えないという状況で、社員も徐々に去って行きました。一時期50人いた社員も30人に減っていきましたから。苦しい決断でしたが、ここでリセットしようという話になり、2002年11月の終わりに事業を一旦止めて、他社に営業譲渡するというアナウンスをしました。

 周りからは「早く誰かタオルを投げてやれ」と感じていたと、後から知りました。何のために戦っているのか分からないけど、とにかくサバイブしなきゃという気持ちが強かったですね。精神的には病んでいませんでしたし、塞ぎ込んでいる場合でもなかったですから。それと、本当に多くの人たちに相談にのってもらえましたし。

--会社をたたんだ後、ソニーに入社されましたが、それまでの経営との大きな違いは何だと感じていますか?

 僕はベンチャーではさまざまなことを経験から学びましたし、ここソニーでは組織や人から学んでいます。会社は与えられたコンディションで何かをやらなければならないという状況の中、気持ちとクリエイティビティを使いながら新しく切り開くという点でベンチャーでの経験が生かせていると思います。今は、組織の作り方と動き方、人そのものに関して学ぶことが大きいですね。

 それをふまえて、「過去の自分がどのように人をまとめていたか」「リーダーシップはどうだったか」と考えれば反省点はたくさんあります。

 「企業のCEOから大企業の一社員となってどうか」というのをよく聞かれることがありますが、僕にとってはどうもこうもない。一軍から二軍に落ちたら気分は落ち込みますが、野球選手がプロレスラーになっても落ち込まないですよね。転向した先を違うステージにしただけですから。社長から社員ではあるけれども、イエルネットからソニーというのは全く違う土俵なんですよね。迷いは有りませんでした。

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